突然のアルフレッドの言葉に会場が凍りついたが、調香委員会はそれが妥当だと判断したようで頷いている。 一方アイリーンの方は突然の事に目を泳がせていたが、そんなアイリーンを庇うように横からフィオナが何かを差し出す。「そうですね……レシピは白檀とベルガモット、それから——」 たどたどしくアイリーンは紙を読み上げているが、アルフレッドはまた手を上げた。「白檀とベルガモット? 君が提出した香りのサンプルはそのレシピでは出来上がらないぞ。ベルガモットはここには入っていないからな」 アルフレッドの言葉に委員会がすぐさま立ち上がり、アイリーンが持っていたレシピを熟読し、商品の香りを確かめて顔を顰めた。「彼の言う通りです。これはこの作品のレシピではない」 委員会の言葉に会場がざわついた。そして皆がアルフレッドに注目する。「そうだろうな。その作品は彼女の姉、リリアナ・ヴェールが数年に渡り母の研究を引き継いで仕上げた物だ。どうやらアイリーン嬢は母親が残したレシピしか入手出来なかったようだが、俺は姉本人から本物のレシピを預かってきた。それがこれだ」 アルフレッドはリリアナから預かった大量の書類を委員会の人間に渡した。 彼らはすぐさまそれを読み込み、時々感嘆の声を漏らす。香りについての勉学をした者ほどそのレシピの優秀さが、計算され尽くした緻密さが分かるはずだ。「これはどういう事でしょうか? アイリーン様」「えっと、それはその、」「もう良いんじゃないか。それ以上取り繕おうとすればするほど、泥沼になると思うが?」 アイリーンの言葉を遮ってアルフレッドが言うと、そんなアルフレッドをフィオナが睨みつけきて口を挟む。「どうしてあなたがそのレシピを持っているのですか? リリアナから直接受け取ったとは、どういう事なのでしょう? 彼女は今も行方不明のはずですが?」「表向きにはそうだな。だがこの小さな小国で君たちの手を尽くしても見つからなかったという事は、もっと上位の誰かが匿っていると考えた方が良いんじゃないか?」 暗にエバンズ家で保護している事を伝
Last Updated : 2026-10-23 Read more