突然の呼び出しにも関わらずルークはすぐさま答えを返してくる。「まだ何も。ただ、あの日の早朝に一台の馬車があのホテルの裏口から出た事は分かった。今はその馬車を探してる所だよ」「そうか。すまないな」「構わないよ。君はどうしてもあの夜が忘れられないみたいだし?」 からかうような口調のルークにアルフレッドは眉根を寄せると、ルークを追い出して準備をし始める。 サンドラの一件で立ち上げに少し遅れが出てしまったが、別に元々期日を決めていた訳ではないので問題はない。 アルフレッドは準備を整えて部屋を出ると、隣室のドアを叩いた。「今日の体調はどうだ? サンドラ」 部屋の外から声をかけると、中から今日は比較的元気な声が返ってくる。「今日は大丈夫です! すぐに出ます」 リリアナの妊娠が分かってから、アルフレッドは毎日こうしてリリアナを迎えに来てくれる。どうして彼がそこまで良くしてくれるのかは分からないが、シャルロッテに呼び出されてからというもの、何か覚悟のようなものがその行動の中に見て取れた。「確かに今日は顔色が良さそうだ。ん? 香りを変えたのか?」「はい。気付いたんですけど、柑橘系の香りが気分を良くしてくれるみたいなんです」「へぇ。そういうのはメモっておくといい。きっといつか役に立つ」 どんな経験も何かに繋がっている。アルフレッドは常々そう思っている。 アルフレッドの言葉にサンドラは目を輝かせた。「本当ですね! 確かにこれは妊娠していないと分からなかったかもしれません」 思わずリリアナが言うと、アルフレッドは視線を逸らした。 そこでリリアナはハッとする。自分の子ではないと思っているアルフレッドにこんな話をするのは失礼だ。「すみません……こんな事、言うべきじゃありませんでしたね」「いや、そうじゃない。そうじゃなくて——君は調香の事になると本当に生き生きするなと思っただけだ」 何を勘違いしたのかサンドラが申し訳無さそうな顔をするので、アルフレッドは慌てて否定して二人でラボに向かう。
آخر تحديث : 2026-09-15 اقرأ المزيد