アイリーンはアルフレッドからの予想もしていなかった問いかけに息を詰まらせた。この隠し口座は万が一の時の為にフィオナがアイリーンの名で作ったものだ。 まさかこの口座がアルフレッドに知られているとは、夢にも思っていなかった。「どうなんだ? それとも君が一人で考えてやったのか?」 アルフレッドはさらに強い口調で問い詰める。ここで何かしらの情報を聞き出さなければ、また巧妙に隠されてしまうだろう。それだけは避けたい。「こ、こんな口座、私知りません。誰かが私の名を騙って勝手に作ったんですわ!」「勝手に作った? それは誰だ? 母親か? 父親か? それとも、勝手に君の名を使う事が出来るほどの近親者か?」 畳み掛けるように言うと、アイリーンがふと視線をサンドラに向けたかと思うと、僅かに唇の端を上げる。「もしかしたら、姉かも……」「姉?」「ええ! きっと逃走資金に困って勝手に私の名を使ったに違いありません! そこに入金されたお金もきっと汚いお金に違いありませんわ!」 アルフレッドがどこまで事件の事を知っているのかは分からないが、どうにかして逃げ切らなければならない。ここは全ての責任を今は逃亡していると思われているリリアナに押し付けてしまおう。 我ながら良いアイディアだと思っていたのに、ふとサンドラが口を開いた。「それは少し難しいのでは?」「何故だ?」 それまで黙っていたサンドラが唐突に口を挟んでくるが、それを止めようとは思わなかった。普段のアルフレッドからは考えられない事だが、あの発表会の一件からアルフレッドはサンドラに尊敬にも似た気持ちを抱いている。「口座を作るためには偽装出来ないよう、必ず本人が居なければなりませんよね? もしくは委任状ですが、それには個人のサインと印章が必要です。あなた、お姉様に印章を預けているのですか?」「確かにその通りだな。君たちの仲は決して良くなかったようだが、そんな物を姉に預けていたのか?」 サンドラの指摘にアイリーンが笑みを完全に消した。どうやら失踪した姉に全てを擦り付けようとしたらしい。どこまで性根が腐っているんだと
最終更新日 : 2026-09-23 続きを読む