「みぃ、悪いけどその話は無しだ」 看護実習生募集用紙を丁寧に畳み、瑞希くんは背広の内側へしまった。募集用紙を私へ返すつもりは一切ないようだった。 本人は抑えているつもりだろうが、明らかにいつもより機嫌が悪い。それもそのはず。私が寝込んで心配をかけたところに、瑞希くんにとって看護実習生の話は喜べない話だっただろうから。久しぶりに会えたのに、とも思っていることだろう。 瑞希くんは私から視線を外しただけで、流れていく景色を見るでもなく目を閉じた。仕事も忙しく、疲れもあるのだろう。 ――だったら、無理に送迎なんかしなくてもいいのに。 意地の悪い考えが浮かんで、私は袴を握る。 瑞希くんは私を愛してくれているのだ。親が決めた政略結婚であるにも関わらず、私のことを想ってくださっている。 その気持ちに応えられていないのは、私のほうだ。 瑞希くんは深呼吸して、ゆっくりと口を開いた。だが、すぐには話し始めない。言葉を選んでいるのがわかる。私をできるかぎり傷つけまいとしてくださっている。「……みぃが」 瑞希くんは言って、もう一度ためらうように口を閉じる。閉じていた瞼が開かれ、沈丁花色の綺麗な瞳が私を捉えた。「みぃが、看護婦になりたいと思う気持ちは、俺も理解してる。どうして、そう思うのかも。でも……、世の中、どうにもならないこともあるだろう?」 瑞希くんはそっと私の肩に手を回し、そのまま私を引き寄せた。瑞希くんの肩に頭を預ける形になる。彼は、私の髪を丁寧に優しく撫でた。「決して自分の体が強くないのは、わかるよな」「……
Last Updated : 2026-09-17 Read more