第11話 残された承認印 九年前の計画書に残されていた「詳細は別紙」という一文は、その日のうちに澪の頭から離れなくなった。 別紙が最初から存在しなかったのなら、担当者がわざわざそんな書き方をする必要はない。作成されたうえで失われたと考える方が自然だった。 問題は、いつ、誰が、どんな理由でその資料を消したのか。 翌朝、澪は文書管理部に過去の保存記録を確認するよう依頼した。ただし再開発計画そのものについて調べているとは伝えず、九年前の役員会資料について保存区分の確認が必要になったという形に留めた。 ここまで来ると、誰に何を尋ねるかにも慎重にならざるを得ない。 午前十一時を過ぎた頃、古い文書台帳の写しが届いた。 「電子化以前の記録も残っていたそうです」 澪が資料を広げると、怜司は隣から黙って目を通した。 当時の社内文書は、案件ごとに保存期間と閲覧区分が決められていた。通常の事業計画書なら十年保存。取締役会に関わる重要資料には、さらに長い保存期間が設定されている。 問題の別紙にも、記録上は番号が振られていた。 つまり、間違いなく存在していた。 「これですね」 澪は台帳の一行を指でなぞった。 九年前の五月十二日。 文書名は「再開発事業に関する外部協議報告」。 作成部署は経営企画室。 そこまでは普通だった。
Terakhir Diperbarui : 2026-09-25 Baca selengkapnya