テラスに重苦しい沈黙が落ちた。数秒間、誰も一言も発しなかった。やがてルシアナがゆっくりと弟のほうへ顔を向けた。その顔に再び笑みが浮かんだ。けれど今度の笑顔は、どこか不自然だった。「クラーク……ただ話をしていただけよ」クラークはすぐには答えなかった。彼の視線が私へ向けられる。私はうつむいたまま、目の前で両手を固く握り合わせていた。彼はすぐに、何かがおかしいことに気づいた。「マリー・ローズ」私はゆっくりと顔を上げた。「はい、社長?」彼の声は相変わらず穏やかだった。「大丈夫か?」私は数秒間、答えるのをためらった。彼と姉の間で争いの原因になることだけは避けたかった。「はい……」けれど、自分でもその答えに説得力がないことはわかっていた。クラークもすぐにそれを察した。彼はルシアナへ向き直った。「彼女に何を言った?」ルシアナは、まるで大したことではないとでもいうように、軽く肩をすくめた。「ちょっとした忠告よ。それだけ」「忠告?」彼の目がわずかに険しくなった。ルシアナは腕を組んだ。「彼女は入社したばかりでしょう。だから、私たち一族の評判が大切だということを、ただ思い出させてあげただけよ」クラークは数秒間、彼女を見つめた。表情は穏やかなままだった。けれど、その目は冷たくなっていた。「ルシアナ、私の社員は私の責任だ」彼女は小さくため息をついた。「ただ、テリー家の名を守りたかっただけよ」クラークは動かなかった。「我々の名前は、人を脅してまで尊敬される必要はない」彼の言葉が、静寂の中に重く響いた。ルシアナは驚いたように目をわずかに見開いた。「私が彼女を脅したと、本気で思っているの?」クラークは彼女の視線をまっすぐ受け止めた。「姉さんのことはよく知っている」その声は穏やかだった。けれど、一つひとつの言葉には重みがあった。「そして、誰かが怯えているときくらい、私にはわかる」胸の奥に、何かが詰まるような感覚がした。こんなふうに誰かに庇ってもらったことなんて、一度もなかった。ルシアナはゆっくりと私へ視線を向けた。その表情は、先ほどよりもさらに冷たくなっていた。「それじゃあ、あなたは彼女の味方をするのね……」クラークは微動だにせず、穏やかに答えた。「私はただ、正しいことを守っているだけだ」二人の間
Última actualización : 2026-10-03 Leer más