翌日、エロワーズにとって決して退屈な一日ではなかった。彼女は早起きをした。周囲が騒がしかったからではなく、久しく味わっていなかったような胸の高鳴りを感じていたからだった。部屋を出ると、リビングルームのソファに腰掛け、タブレットを手に書類を真剣に読み込んでいるタナーの姿が目に飛び込んできた。外国にやって来てまで、仕事を脇に置く気になれないのは明らかだった。「休暇中でしょ、覚えてる?」テーブルからリンゴを一つ拾い上げ、彼に近づきながら彼女が言った。タナーはすぐには顔を上げなかった。「分かっているさ」「そうは見えないけどね」リンゴを一口かじりながら、彼女は返した。「取締役会の真っ最中みたいな顔をしているわよ」そこでようやく彼は彼女を一瞥し、片方の眉をわずかに跳ね上げた。「まだ何も始めていないというのに、もう疲れ切っているのかい?」エロワーズは不敵にニヤリと笑い、ソファの反対側の端に腰掛けた。「疲れてなんていないわ。ただ退屈なだけよ」「なら、自分で何とかしたらどうだ」タブレットへと視線を戻しながら、彼は簡潔に答えた。「例えば何を?」彼女が尋ねた。「僕を巻き込まないことなら何でもな」彼は微塵も悪びれずに答えた。エロワーズは両目を丸めてみせたものの、笑みをこぼさずにはいられなかった。彼のこういう部分は、昔から何一つ変わっていない。「スキーに行きましょうよ」彼女は突如として提案した。タナーはすぐには答えなかった。数秒間沈黙を守った後、ようやくタブレットを下ろして彼女を見つめた。「嫌だね」エロワーズは眉をひそめた。「嫌?」「君が行けばいい。僕はここに残る」彼が答えた。彼女は首を横に振った。「へえ。一緒にて本当に楽しい人ね」「僕はエンターテイナーじゃないからね」彼は即座に言い返した。「ショーを見せてなんて頼んでないわ」彼女は間髪入れずに言い返した。「ただ一緒についてきてって言っているの」タナーは彼女が本気かどうかを見極めようとするかのように、しばし彼女を凝視した。数秒後、彼は溜息を吐き出すと立ち上がった。「分かったよ」気乗りしない様子を隠しもせず、彼はついに折れた。「だが、僕が楽しむなんて期待しないでくれよ」エロワーズは微笑んだ。「あなたの許可なんて最初から必要ないわ」ほどなくして、彼らはそれぞれのレジャーを楽しんでいる人々で賑わうスキー
Last Updated : 2026-10-16 Read more