その日の朝、エロワーズは早くに目を覚ましたものの、すぐにはベッドから出ようとしなかった。代わりに、ベッドの反対側でぐっすりと眠っているタナーの姿を、彼女は静かに見つめていた。片腕を額の上に載せ、唇をわずかに開けて眠る彼の姿。普段の頑固で無頓着な男とは違う一面を垣間見ることができるのは、決まってこんな瞬間だった。彼女はしばらくの間彼を凝視していたものの、ゆっくりと視線を外した。(こんな風に、彼に調子を狂わされるわけにはいかないわ……)足音ひとつ立てぬよう慎重にベッドを抜け出すと、彼女は大急ぎで支度を整えた。タナーを起こそうともしなかったし、どこへ行くのかを彼に告げる気もさらさらなかった。まずは一人でじっくりと考えを整理する方が先決だった。他のことをする前に、確かな事実を見極める必要があったのだ。病院へ到着すると、彼女は手に持った小さなバッグを強く握りしめながら、産婦人科へと一直線に向かった。バッグが実際よりも遥かに重く感じられた。自分の名前が呼ばれるのを待つ間、胸の奥で膨らみ続ける緊張感をうまく説明することができなかった。一秒過ぎるごとに、これから自分が耳にするであろう事実に対する不安は増す一方だった。「アルダマ・エロワーズ様?」彼女は即座に振り返り、立ち上がった。「はい」小さく返事をすると、彼女は看護師の後に続いて診察室へと足を踏み入れた。それから間もなくして、彼女は医師の向かい側に腰掛け、妊娠検査の判定と超音波(エコー)検査の結果についての説明に静かに耳を傾けていた。「おめでとうございます、アルダマ夫人」医師は笑みを浮かべながら超音波写真のコピーを手渡した。「現在、妊娠およそ4週目ですね」一瞬、エロワーズは世界の時間が完全に停止したかのような衝撃を覚えた。4週目。彼女は震える手でゆっくりとその紙を受け取ると、そこに写し出された小さな影をまじまじと見つめた。まだはっきりと形を判別できる段階ではなかったものの、それが何を意味しているのかを彼女は痛いほど理解していた。「まだ妊娠初期の段階ですので、くれぐれもお身体には気をつけてくださいね」医師の表情が真剣なものへと変わった。「妊娠初期から中期にかけては、非常にデリケートな時期です。つわりや吐き気、情緒の変化などを経験されるかもしれません。必要なビタミン剤とお薬を処方しておきますね」自分の身
Last Updated : 2026-10-17 Read more