重厚なオーク材の扉が、背後で重々しい音を立てて閉まった。「はぁ、はぁ……っ……」エマはドレスの裾を固く握りしめ、冷たい壁に背中を預けた。荒い息を吐き出すたびに、視界がぐにゃりと歪む。全身の血が激しく波打ち、皮膚の内側から焼けつくような熱が込み上げていた。(嘘でしょ……お姉様たち、私に何を飲ませたの……?)今夜は、異父姉妹であるクロエの誕生日パーティーだった。家族から「うちの恥晒し」「泥くさい芋女」と蔑まれてきたエマは、パーティーの雑用係として無理やり連れてこられたのだ。そして数分前、クロエから手渡されたジュースを口にした直後から、意識が朦朧とし始めた。廊下から、薄笑いを浮かべた男性たちの声が聞こえる。『あの地味な妹、どこへ逃げた?』『クロエが言ってたぜ。あいつならいくら弄んでも文句は言わないってさ』罠だった。エマは恐怖に震えながら、暗闇に包まれたホテルのスイートルームの奥へと必死に足を進めた。逃げなければいけない。この地獄のような家族から、この屈辱的な夜から。しかし、足がもつれ、重厚な絨毯の上にひざまずいてしまう。「……誰だ」暗闇の奥から、低く掠れた、恐ろしいほどに冷徹な男の声が響いた。エマが弾かれたように顔を上げると、影の中から一人の男が立ち上がるところだった。月光を背に受けるその男は、完璧に仕立てられた高級スーツのネクタイを緩め、荒い息を吐いている。男——イザン・ヴァレンタインもまた、異様な熱に侵されていた。国の経済を裏から支配すると言われるヴァレンタイン・グループの若き総帥。政敵によって仕組まれた強力な媚薬の影響で、彼の理性のタガはすでに崩壊寸前だった。「出ていけ……死にたくないなら、今すぐ俺の視界から消えろ」イザンはエマの胸元を掴み、壁に押し付けた。しかし、触れ合った皮膚から伝わる冷たさに、男の喉から低い喘ぎが漏れ出る。「あっ……離し……っ」エマが抗おうとした瞬間、男の強靭な腕が彼女の細い腰を強く引き寄せた。「待て……お前……」暗闇の中、男の視線がエマの瞳を射抜く。メガネは弾け飛び、髪は乱れていたが、男の手が触れた場所から狂おしいほどの甘い香りが立ち上っていた。理性が、プツリと切れる音がした。「嫌……やめて……!」エマの切痛な拒絶は、イザンの熱い唇によって
Dernière mise à jour : 2026-09-27 Read More