どこを目指すでもない、ふらふらと無意識に任せた足取りが向いた先は、自室へ向かう廊下であった。 一端腰を落ち着け休み、この短い時間で怒涛のように畳みかけた奇妙な難事を整理したい。リプカは無意識が選んだ逃走を幸いと判じて、息を落ちつけようと考えたのだが――しかし、そういうわけにもいかなかった。 自室には、見知らぬ先客がいた。 怒涛のように畳みかける難事は、どうやらまだ続くらしい。 この屋敷で唯一リプカの色が見て取れる自室に入ると、無遠慮に部屋中の物を物色する女性があった。 女性はリプカが硬直している間も手を止めず、今はリプカの下着を漁り、それを手に取りしげしげと観察していた。「なっ!?」 すわ、強盗であるか? リプカは一瞬そう考えたが、相手は耽美な薄黄色のドレスに身を包んだ、どこをどう見繕っても強盗を働く身分とは見受けられない、女性であった。「――い、いったい誰ですッ!?」 リプカの上げた声に顔を上げ、扉の前に立つ者の存在を認めると、女性は下着を元の場所に戻し、悪気の一つも感じぬ澄まし顔でリプカに近寄った。そして礼だかなんだか分からぬちょいと頭を下げる所作を挟むと、堂々と名乗りを上げた。「技巧の国アルファミーナ連合、ロライキス領域から遣わされた王子、ビビ・アルメアルゥだ。貴方の人となりを調べるため、部屋を見させてもらっていた。よろしく頼む」 言って、やはり無表情じみた澄まし顔で、リプカに手を差し出した。 再び硬直したリプカを見て、女性は小首を傾げた。情報過多で働きを止めたリプカの思考が解凍するまで、しばらくの時間を要した……。(――――なっ) 無言の時間が過ぎ、再び動き出した思考で真っ先に思ったのは。(ま、また――また女性!?) やはり、それであった。「――失礼。リプカ・エルゴール殿で間違いないか?」 ビビは濁りのない瞳で、リプカの目を真っ直ぐに見つめながらそう問うた。 どうしてそんな所作ができるのか。リプカは信じられない思いを抱いて、僅か身を引いた。「あ、あの、貴方、貴方は今、私の部屋を物色していましたよね……? 間違いでは、ないですよね……?」「ああ、間違いない。言った通り、貴方の人となりを調べるた
Dernière mise à jour : 2026-09-28 Read More