古今東西、婚約破棄の成り行きに様々なものがあるとはいえ、まさか三日天下ならぬ三日夫婦なんてものがあろうとは。 縁を司る神々でさえ、これは予期しなかったことであろう。 婚約破棄とは、通常、複雑な事情の末に起こる悲劇ではなかったのか? エルゴール家の令嬢リプカは、その唐突な宣告に茫然としてしまった。「な、なぜですか……!?」 心中では何故もなにもないと予感を抱きつつ、少女は掠れた声を上げた。 リプカ・エルゴール。 背は低く、幼子のようで、髪は色気のない漆黒色。身体の起伏もほとんどない……。程々に整った顔の造りが、せめてもの生まれ持った慰めのような女――それが、鏡の前で自覚する姿見である、己に自信というものがない少女であった。「どうして、こんなに突然に……」 小さな叫びに、リプカが嫁いだ夫、ハーレヴァンは冷たい目を向けた。 ハーレヴァン・エイルムメイティル。 彼はリプカが嫁いできたその日から、新しい妻に冷たい態度を示していた。「お前の妹、フランシスが来てくれれば文句はなかったのだがな」 嫁ぎ先で初めて交わされた言葉がそれであった。 その後も、才女で美しいリプカの妹、フランシスと比べるようなことをハーレヴァンは事あるごとに口漏らした。――むしろリプカに対して、そのことでしか口を開かなかったというのが正しいか。 あの美しいフランシスが我が元に来てくれればどれだけよかったか。リプカが何かに失敗するたびに、フランシスならば、フランシスであればそんなことは、と滔々と口にする。 二人の関係は、最初から冷え切っていた。 リプカはハーレヴァンに、人間とすら見られていなかった。であるから、婚約破棄の宣告は当然といえば当然の成り行きではあったのだが――。 しかし、三日という早さでそれを宣告されるとは。 どう考えても、それは不自然であった。「なぜです、ハーレヴァン様! 至らぬ事の多い私ですが、これはあんまりでございます……!」 三日で嫁ぎ先を追い出された女という噂が広まれば、どうなるか――。 ハーレヴァンのそれは、虐げるという言葉でも足りない、リプカを追害するよ
Last Updated : 2026-09-28 Read more