第11話 罪人の檻で、私の中の狼が目を覚ました 地下へ続く階段は、思っていたより長かった。 監察局の上階ではまだ人の声や紙をめくる音が聞こえていたのに、一段、また一段と降りるたび、それらが遠ざかっていく。代わりに耳へ残るのは、衛兵の靴底が石段を踏む硬い音と、どこかから落ちる水滴の規則的な響きだった。 銀製の拘束具は、まだ手首に巻かれている。 先ほど感じた焼けるような痛みは少し収まったものの、完全には消えていない。むしろ皮膚ではなく、その奥にある何かが銀を嫌がっているような、不快な熱がじわじわと続いていた。「大丈夫ですか」 前を歩いていたエドガーが振り返る。「歩けます」「そういう意味ではありません」 セレナは少しだけ眉を上げた。「では、どういう意味ですか」「拘束具の反応です。通常、この程度の銀で皮膚が赤くなることはありません」「私にも分かりません」「狼を持つ者でも、銀にここまで反応するのは珍しい」「私は、その狼を持たないと言われて生きてきました」「……そうでしたね」 エドガーはそれ以上聞かなかった。 だが、完全に納得した顔でもなかった。 階段の下には厚い鉄扉があり、二人の衛兵が待っていた。エドガーが文書を見せると、重い鍵が回される。 扉の向こうにあったのは、いわゆる牢獄だった。 上階の保護房とは違う。 石の壁。 鉄格子。 最低限の寝台。 小さな水差し。 窓はなく、壁に固定された灯火だけが頼りだった。 それでも、地下牢としては清潔に保たれている。床に藁が散らばっているわけでもなく、悪臭が漂っているわけでもない。
Last Updated : 2026-10-10 Read more