エレベーターが十二階を過ぎた。真帆は、澪へタブレットを滑らせた。「代替保護案の草案よ。今、あんたがこれを選んで提出すれば、強制搬送はいったん保留にできる」澪は素早く画面を読んだ。【保護・共同捜査協定】期間:九十日間。最初の一行から、気に入らなかった。「『保護』が先なんですね」怜司が隣から言った。「変えられます」「共同捜査が先です」「修正します」真帆がすぐに文言を書き換えた。【共同捜査および安全協定】澪は、次の項目へ進んだ。指定のセーフハウスでの居住。生体霊力の状態を定期的に確認。特殊現象の発生時は、第一捜査班との連絡を維持。ここまでは受け入れられた。問題は、その下だった。【安全上必要な場合、担当班長は対象者の移動制限措置を要請できる】「削除」真帆が即座に消した。怜司も反対しなかった。「制限が必要なほどの危険が生じた場合は?」彼が尋ねた。「危険と選択肢を、先に説明してください」澪は答えた。「私が意思決定能力を失ったと判断するなら、その根拠を、桐谷弁護士と別の医療者に同時に検証してもらってください。あなた一人では決めないこと」「同意します」エレベーターが十五階を過ぎた。澪は読む速度を上げた。「投薬は、本人の同意なしには禁止。鎮静剤だけでなく、霊力抑制剤も含めて」「入れる」真帆が入力した。「身体への接触は、緊急救助を除き事前に説明」怜司が言った。「緊急救助の範囲も、決めておいたほうがいいでしょう」澪は彼を見た。「生命、または身体への重大な損傷が差し迫り、同意を得る時間がないとき」「はい」「それから、緊急事態が終わったら、即座に接触を終えること」「そうします」階数表示が、十六に変わった。廊下の捜査官たちが動いた。澪は最後に、契約終了の条項を読んだ。【危険性が解消された場合、早期終了が可能】「ここも変えてください」「どう変える?」真帆が聞いた。「九十日を上限に。私がいつでも終了を求められるようにして」「機関側が拒否したら?」「理由を文書で出させて」怜司が先に答えた。「拒否があった場合は、独立した審査に回します。第一捜査班は、単独で延長を求めません」澪は、その文章を自分で追加した。「もう一つ」怜司を見た。「共同捜査と言った以上、私の情報だけを持っていかないでください。
Dernière mise à jour : 2026-10-02 Read More