私がその景色を忘れることはないだろう。 うなされるほど夢に見た、彼が死するその瞬間を。「ルカぁっ!!」 今まさにその光景が目の前で起きようとしている。ミノタウロスの大斧が彼の前で振り上げられ、彼の後ろには少女が一人庇われていた。 彼がいかに優れた魔法騎士であったとしても、少女を庇ったままでは得意の風魔法を使う余力なんてないだろう。 だから私は叫んで、そのままミノタウロスと彼の合間に滑り込み、持っている盾で斧の切先を受け止めた。 この瞬間のために私は生きてきたんだから、受け止めた斧の重さと勢いで折れた腕なんてなんでもない。 確かに耳に響いた骨の折れる音と泣き叫びたいくらいの強い痛みを感じながら、それでも私は彼を護り続ける。 たとえこの目で今まさに、走馬灯が映っていても。 ******** 「お父様、私を勘当してくださいな!」 片田舎のカリスと呼ばれる領地から首都であるラザニーのタウンハウスに越してきたその日、幼い私は家に帰るなり家族が揃う居間でそう言い放つ。「な…何を言い出すイザベラ!」 しかし当然お父様は怒って私にそう返した。それもそうだろう、たった六歳の令嬢がいきなり親に向かって「勘当してくれ」だなんて、私が親でも卒倒しかねない。 だけど私はその反応を承知でこの話を切り出した。何故なら私はあることをきっかけに自分の“前世”というものを思い出したからだ。 **** それはつい十五分程度前のこと。私は家族と共に引っ越してきたタウンハウスでやることもなく暇を持て余し、こっそりと引越し作業を進めるタウンハウスを抜け出して散歩をしていた。 しかし六歳児が早々帰り道など覚えていられるはずもなく、案の定帰り道がわからず彷徨ってしまったのである。 半べそをかきながら通りを彷徨っていると、何やら立ち止まっている人間を見かけた。相手はどうやら道に迷っているというわけでもなさそうだったので、何か知ってるんじゃないかとその時の私は思っただけ。「あの…」 そう小さく声を相手にかけた時、振り返った彼の姿を見て私の脳は弾けたように前世の記憶を解き放つ。 確かに、声をかける人間は本能的に危なそうでない人間を選んだつもりではあった。本当にただ帰り道を知りたかっただけで、それ以上に何か意図があったわけじゃない。 でも目の前にいたの
Última actualización : 2026-10-06 Leer más