第31話 私は、運命ではなくこの婚約を選びます アルドリックから契約婚約を申し込まれた翌朝、ミレイアは机の上に十二枚の紙を並べていた。 昨夜、自室へ戻ってから書いた条件案である。 当初は三十条くらいになるかもしれないと思っていた。 実際には、二十七条になった。「多いでしょうか」 朝食後、月律審理官室へ顔を出したローデリクへ尋ねると、彼は最初の一枚を読み、二枚目を読み、三枚目の途中で眼鏡を外した。「婚約契約ですよね?」「はい」「国家間の停戦条約ではなく?」「そこまで多いですか?」「条項数より、細かさの問題です」 横でニーナが覗き込む。「どんなことが書いてあるんです?」「ニーナ」「見ません。見ませんけど、気にはなります」 ミレイアは自分でも少しやりすぎたと思っている。 けれど、考えれば考えるほど条件が増えた。 婚約期間は最長六か月。 月律審理官の常設法制化が完了し、ミレイアが独立して職務を継続できるようになった時点で、双方の意思を改めて確認する。 どちらか一方が解消を希望した場合、理由の開示を義務づけない。 婚約を理由として互いの私室、書簡、交友関係へ干渉しない。 職務上の判断へ圧力をかけない。 公務上必要な場合を除き、身体的接触を求めない。 婚約解消後、金銭的・政治的・感情的な返礼を要求しない。 さらに。「第十四条。互いの過去の恋愛関係について、必要以上に質問しない……」 ローデリクが読み上げる。「そこも契約に?」「必要だと思って」
Last Updated : 2026-10-31 Read more