All Chapters of 『運命の番に捨てられた私、狼王国の婚約契約を裁く女王になりました』: Chapter 31 - Chapter 33

33 Chapters

第31話 私は、運命ではなくこの婚約を選びます

第31話 私は、運命ではなくこの婚約を選びます アルドリックから契約婚約を申し込まれた翌朝、ミレイアは机の上に十二枚の紙を並べていた。 昨夜、自室へ戻ってから書いた条件案である。 当初は三十条くらいになるかもしれないと思っていた。 実際には、二十七条になった。「多いでしょうか」 朝食後、月律審理官室へ顔を出したローデリクへ尋ねると、彼は最初の一枚を読み、二枚目を読み、三枚目の途中で眼鏡を外した。「婚約契約ですよね?」「はい」「国家間の停戦条約ではなく?」「そこまで多いですか?」「条項数より、細かさの問題です」 横でニーナが覗き込む。「どんなことが書いてあるんです?」「ニーナ」「見ません。見ませんけど、気にはなります」 ミレイアは自分でも少しやりすぎたと思っている。 けれど、考えれば考えるほど条件が増えた。 婚約期間は最長六か月。 月律審理官の常設法制化が完了し、ミレイアが独立して職務を継続できるようになった時点で、双方の意思を改めて確認する。 どちらか一方が解消を希望した場合、理由の開示を義務づけない。 婚約を理由として互いの私室、書簡、交友関係へ干渉しない。 職務上の判断へ圧力をかけない。 公務上必要な場合を除き、身体的接触を求めない。 婚約解消後、金銭的・政治的・感情的な返礼を要求しない。 さらに。「第十四条。互いの過去の恋愛関係について、必要以上に質問しない……」 ローデリクが読み上げる。「そこも契約に?」「必要だと思って」
last updateLast Updated : 2026-10-31
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第32話 契約婚約なのに、王妃候補と呼ばれています

第32話 契約婚約なのに、王妃候補と呼ばれています 狼王アルドリックとの婚約が公表された翌朝、ミレイアの部屋には青いドレスが届いた。 注文した覚えはない。 正確には、青い服を買いに行くつもりはあった。けれど橋の上で襲撃され、その後はアルドリックの負傷、月律審理官の資格停止、保証人問題、契約婚約と続き、服どころではなくなっていたのだ。 それなのに、寝台の上には深い青色の布地が広げられている。 冬の夜空のような色で、銀糸の刺繍が襟元と袖口に控えめに入っていた。「……ニーナ」「はい」「これは?」「王室衣装部からです」「どうして?」「本日の婚約公表後、初めての公式会見用です」 ミレイアはゆっくり振り返った。「公式会見?」「はい」「聞いていません」「昨夜決まったそうです」「誰が?」「王室広報局と評議会、それから陛下です」 最後の名前で、眉が上がる。「陛下も?」「はい」「私には何も」「伝令は昨夜来たそうなのですが、ミレイア様が寝ていたので、陛下が起こすなと」 それを聞くと怒りにくい。「でも、起きてから教えてくれても」「今、教えています」「そういう問題ではないでしょう」 ニーナは少し笑いながら、ドレスを持ち上げた。「それより、見てください。青ですよ」「それは見れば分かります」「ご自分で選びたかったでしょう?」 そこだった。 ミレイアはドレスを見る。
last updateLast Updated : 2026-11-01
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第33話 王妃候補になった途端、あなたは私の話を聞くのですね

第33話 王妃候補になった途端、あなたは私の話を聞くのですね エレオノーラ・ハルトマンから届いた申立書を読み終えたあと、ミレイアが最初に確認したのは、夫の肩書きだった。「ハルトマン子爵、ですか」 翌朝、月律審理官室で資料をめくっていたローデリクが頷く。「オットー・ハルトマン子爵、四十六歳。南部に葡萄園と牧草地を持つ旧家です。王都では貴族評議会の宗教慣習委員会に所属しています」「宗教慣習委員会?」「婚姻儀礼、神殿との折衝、古い家法などを扱う委員会ですね。法制委員会ほど強い権限はありませんが、保守派の発言力が強い」 嫌な予感がした。「以前、エレオノーラさんは『番から離れるのは月神への背信だと神殿に言われた』と話していました」「覚えています」「ご主人も、そういう考えなのでしょうか」「可能性はあります。ただ、まだ本人から聞いていません」「そうですね」 決めつけない。 最近、それを意識する場面が増えた。 エレオノーラと最初に話した時、彼女は夫から殴られていないと言った。生活費も十分。子供たちにも優しい。貴族社会では「何が不満なのか」と言われる家庭なのだろう。 だからこそ。『幸せでなければいけないの』 あの言葉が、ずっとミレイアの中へ残っていた。「それで」 ローデリクが別の紙を出す。「夫側から条件が来ています」「条件?」「聴取には応じる。ただし、月律審理官ではなく『国王陛下の正式な婚約者』として来るなら話す、と」 ミレイアはしばらく黙った。「……意味が分かりません」「私も最初はそう思いました」「同じ
last updateLast Updated : 2026-11-02
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