「どこが間違っているの?」修吾は、紗月が持ってきた紙を見て聞いた。「私が確認した内容と違います」火曜の午後、修吾はいつもより早く帰ってきた。予定の会議が終わったと言った。玄関の扉が閉まる音で部屋を出た紗月は、まず彼の脱いだ靴を見た。リビングのソファに座った修吾の前には、紗月が整理しておいた支援事例集の原案があった。黒田が先に渡したらしい。「何が違う」「この受領確認書は、荷物がいくつ届いたか確かめたものです。支援金を受け取ったと確認した書類ではありません」修吾は落ち着いてページをめくった。「その荷物は、紗月が暮らす家に届いたんだろう」「ギャラリーに送り直しました」「それで?」修吾が、ソファの隣を軽くたたいた。「立ったまま話さないで、座って。大事でも起きたみたいな顔をしなくていい」紗月は向かいの椅子に座った。修吾の手が、少し長くソファの上に残った。「こう書かれたら、私がその品をもらったことになります」「受け取った人なのは、間違いないだろう」「自分のものとして、もらったわけではありません」「紗月。支援額に入るのは、現金だけじゃない。住んだ家、使った場所、治療に必要だったもの。どれも費用がかかっている」紗月は膝に手を置いた。「その費用と、この荷物は別の話です」「どうして、それが全部わかるの」修吾の笑みが、ほんの少し消えた。「紗月が知らなくても回るように、俺がしてきたんだよ。そんなところに頭を使わなくて済むように」「では、自分がわかるところだけ確認します。この署名は、運ばれてきた荷物を受け取ったという意味です」修吾が紙をテーブルに下ろした。「今日は、誰に何を言われた?」「私が見たんです」「そういう意味じゃないだろう」彼が額を揉んだ。疲れた顔をすれば、紗月が水を持ってきて、話をやめ、謝る。そうなることを知っていた。紗月は立ち上がらなかった。テーブルの端に水のボトルがあった。修吾が目で示す。紗月はボトルではなく、署名の切り取られたページを彼の前へ押し出した。「この部分だけ、もう一度見てください」修吾は紙を取らなかった。差し出したままの指先から、ファイルが少しずつ下がった。腕が痛い。紗月はファイルをテーブルへ置いた。引き戻して、膝に隠したりはしなかった。「水も注げないくらい、俺が嫌いになった?」「お水は用意します
Huling Na-update : 2026-10-11 Magbasa pa