Lahat ng Kabanata ng 私の救世主は、傷を知りすぎている: Kabanata 31 - Kabanata 40

40 Kabanata

31話. 先に決められた便

蓮司は会社で、週末の会議を終えようとしていた。 紗月が会いたいと言うと、すぐに時間を空けた。会議室に入ってきた彼女の顔を見て、席を立った。 「病院で何かありましたか」 「私、月曜日にシンガポールへ行くんですか」 蓮司の手が止まった。 水を置きに入ってきた社員に、少し席を外すよう頼んだ。ドアが閉まってから、紗月は椅子に座った。 蓮司は向かいに座れず、立ったままだった。 「今日、お話しするつもりでした」 「いつですか」 彼はすぐには答えなかった。 「宿と、現地で過ごす場所を先に調べました。いい条件を見つけてから、提案しようと」 「提案する前に、予約したんですか」 紗月は膝に鞄を置いた。スマートフォンには、手配会社と話した番号が残っていた。画面を消し、蓮司を見た。 蓮司が椅子に座った。 「航空券は発券していません。行くと言ってくだされば、手配するつもりでした」 「宿は?」 「キャンセルできます」 「じゃあ、私の月曜日もキャンセルすればいいんですか」 蓮司の視線が彼女の鞄へ下がった。中には検収に出す楽譜が入っていた。紗月は開けて見せなかった。見せなくても、そこにある仕事でなければならなかった。 「どうして知らない人から、先にその話を聞かなきゃいけないんですか」 蓮司は一度目を伏せ、また上げた。 「それは
last updateHuling Na-update : 2026-10-11
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32話. 取り消したのは予定

予約のキャンセル確認は、翌日の午前中に届いた。 二つ目の部屋は取り消され、航空便の問い合わせも終了していた。手配会社は本人の依頼なしに連絡したことを詫び、追加予約を中止した。 紗月はそのメールを読み、蓮司にメッセージを送った。 【確認しました。今日の午後、少しなら会えます】 蓮司は先に場所を決めなかった。紗月が家の近くではない書店の休憩スペースを送ると、そこへ行くと答えた。 紗月は本を開いたが、読めなかった。先に着いていた蓮司は、スマートフォンだけを手にしていた。 「キャンセルの明細は受け取りました」 紗月は言った。 「はい」 「費用は?」 蓮司は少し彼女を見た。 「キャンセル料が生じた分は、私が負担しました。紗月さんに請求が行くものはありません」 紗月はページをめくりかけ、止めた。蓮司が先に説明を続けた。 「個人の予約にかかった4万2,000円です。会社の経費にはしていません」 スマートフォンをこちらに向けた。請求先、鷹宮蓮司。4万2,000円。紗月は画面を見てから、押し返した。 「キャンセルしたからといって、すぐ平気になるわけじゃありません」 「はい。私が負担すべき費用です」 蓮司は座り直した。 「私が心配だという理由で、紗月さんの予定を後回しにしました。安全な選択肢を差し上げたかったと説明しましたが、本当は、自分が安心できる場所にいてほしかったんです」 いつもより、ゆっく
last updateHuling Na-update : 2026-10-12
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33話. 30億円の条件

月曜日は、予定どおり楽譜室に行った。 遠山は中間成果から、確認する項目をいくつか選んでいた。紗月は椅子を引いて座り、説明を聞いた。同じ作曲家の曲を、別の題名で重複登録した箇所が一つ残っていた。 「手前の資料しか、確認していませんでした」 「こちらの補足リストも一緒に見るといいですよ。最初は見つけづらいですから」 紗月は修正の印をつけた。遠山は直した項目を確認し、次の束の締め切りを尋ねた。間違えた一行のせいで、今日引き受けた仕事を全部取り上げられることはなかった。 昼休みに、母へ届ける収納ケースを買った。大きすぎるものを選びかけたが、病室のテーブルの大きさを再確認し、小さいものに替えた。病院の担当者と約束した時間に寄り、名札だけつけてきた。母は色が気に入ったと言った。 「お母さんが選んだんでしょう」 紗月が言うと、母は短く笑った。 午後、戻る途中で、蓮司から到着したというメッセージを受け取った。現地の空港からの短い連絡だった。 【私も、自分の予定どおり行ってきました。出張、無事に終えてきてください】 机の写真まで撮ることはしなかった。蓮司へのメッセージを閉じ、次の楽譜を開いた。 夕方、篠原直人が追加提出した引き継ぎ表紙と、支出明細の写しが届いた。 紗月は宿の机で、ファイルを開いた。 最初に、コードが見えた。 HD-16。 次に父の名前が出てきた。今度は遺族の生活費という表題だけではない。死亡後に整理した支出という説明がついていた。紗月はその下の項目を、ゆっくり読んだ。 外部処理費用。&n
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34話. 受け取らない30億円

紗月は昼食を済ませ、病院に約束の7万円を振り込んだ。会計担当から入金を確認したと返事をもらったあと、修吾から電話がかかってきた。 すぐには出なかった。事務所で橘と相談し、決めた時刻にかけ直した。代理人も一緒に聞いていることを、先に伝えた。 「そこまでしないと、話もできないのか」 彼は言った。 「送っていただいた提案書は、受け取りました」 「なら、読んだんだね。君が外で苦労しなくて済むようにする、という意味だよ」 修吾の声は、病室にいたときと同じように優しかった。 「仕事を辞めるなら、それでいい。好きな音楽もまたやってみればいい。お母さんは、俺が引き続き面倒を見る」 紗月はテーブルの上のペンを見た。 「その代わり、私が修吾さんに頼んだことだったと、確認しなければいけないんですね」 「俺たちの間であったことだろう。君によくわからないことを、俺が代わりにやったんだ」 「私が知らないことは、先に確認します」 修吾の息遣いが、少し変わった。 「誰が横で何を吹き込んでいるのか知らないけど、ここまでしてくれる人はいないよ。君が一生働いて、いくら稼げるのかも考えてみて」 楽譜室から受け取った2万円を思い出した。仕事を終えれば、さらに受け取る金があった。それでも、30億円には届かないだろう。 「一生かかっても、届かないかもしれません」 紗月は言った。 「でも、お金を受け取って、私が望んだことだったとは言えません」 「望んでいなかった? 
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35話. 陽の差す病室

母の新しいベッドには、陽が差していた。 水曜の午後、窓側の相部屋へ移る間、紗月は小さな収納ケースを膝に載せていた。看護師が母をベッドに移してくれてから、ようやくテーブルの下に入れた。せっかく寸法を測って買ったのに、奥へ押すと引き出しが壁につかえた。 「もう少し前に」 母が言った。 「ここ?」 「それじゃ足に当たる。横に置いて」 紗月はケースの向きを変えた。三度目でようやく、母はそれでいいと言った。隣のベッドの患者が笑いながら、場所一つ変えるほうが引っ越しより難しいね、と口を添えた。 カーテンを閉めれば一人で、開ければ隣の人が見えた。夜、体を起こしてもらうケアも、そのまま続くとあらためて説明を受けた。紗月は担当者と次の支払日を確かめてから、ベッドのそばへ戻った。 母は陽射しを避け、少し顔を背けていた。 「眩しい?」 「好きだからって、全部顔に浴びることはないでしょう」 紗月がブラインドを下ろすと、母はそこで止めてと言った。窓の外の枝が見えるくらいだけ、残った。 椅子に座った。今日受け取った提案への返答が、スマートフォンに入っていた。一度署名すれば、もっといい部屋で暮らせただろうか。また、その考えが浮かんだ。 「何かあったの?」 母が尋ねた。 「お母さんに、いいことをしてあげられなかった気がして」 「ここ、よくないって?」 「そうじゃなくて……」 母は布団の下で足を動かした。&n
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36話. 帰ってきてくれて、嬉しい

「4万円、今、振り込みました」 遠山がスマートフォンを置いた。紗月は机の角にある自分の電話を、すぐには見なかった。最後に直した編曲者の項目がきちんと反映されているか確認し、それから画面を点けた。 入金の通知が出ていた。 先にもらった2万円と、今日の4万円。約束の6万円がすべて入った。残りの仕事も引き受けます、と言わなければならない気がして、唇が動き、止まった。 「次の束は、どれくらいありますか」 まず作業量を尋ねた。 遠山は脇の箱を指した。 「今回より少し多いです。同じペースでは、日程がきついかもしれません」 紗月は橘と約束した来週の予定を見た。作業できない日があった。空いている時間を伝えると、一部は別の人に分けると遠山は言った。 「全部私がやると、遅れそうです」 「だから、前もって聞いているんです。引き受けた分だけ、日を守ってください」 紗月は頷いた。遠山は次の束から、彼女の分を分けた。箱が一つ減った。その分、次にもらう金も減った。 検収を終えた行の横に署名し、楽譜を閉じた。階段で銀行アプリを開き、入院費と宿泊費を差し引いた。長く残る金ではなかった。次にもらう分も減ったが、今日した仕事の代金は、すべて入っていた。 蓮司にメッセージを送った。 【検収が終わりました。今夜、お時間は大丈夫ですか】 返事には、少し時間がかかった。 【飛行機を降りました。遅くても構わなければ、会いたいです】 紗月は代理人の事務所に寄ったあとで行ける店を探した。高い店を選びかけ、自分が
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37話. 同じ曲、違う楽譜

「秘書をなさっていたなら、進行の電話も受けていただけますね」 金曜の午前、小劇場の事務室で、担当者が公演の連絡先を紗月のほうへ向けた。遠山から聞いていた仕事は、リハーサル資料の照合だった。紗月は紙を受け取らず、向かいの空いた椅子を見た。 「今日は、連絡業務も含まれているんですか」 「難しく考えなくていいですよ。電話が来たら、何時までに来てくださいと伝えるだけです」 担当者はもう別の電話に出ていた。慣れない職場で、最初の返事から断りたくはなかった。けれど楽譜を開く時間も足りなかった。 通話が終わるのを待って、紗月は言った。 「連絡を受けている間は、楽譜の確認が止まります」 電話の横に、開いた楽譜を置いた。 「両方終わったとは、お伝えできません。今日、必ず終えるほうを先に決めてください」 担当者は手の中の電話と、テーブルのファイルを交互に見た。 「では、資料からお願いします。演奏者からの連絡は、私が受けます」 大した争いもなく終わった。紗月だけが、椅子に座っても少しの間、背を伸ばせなかった。 明日、演奏者たちが同じ場所で止まり、また入れるよう、ページと書き込みを合わせる仕事だった。入力より、自分で読んで聴く必要があるため、紗月に声がかかった。 ピアノ譜とヴァイオリンのパート譜を並べた。印刷された音符は同じなのに、演奏者たちの手書きが違った。一方には繰り返さないという印、もう一方には繰り返しの区間から別のフレーズへ進む矢印があった。 「この印は、いつ決めたものですか」 紗月が尋ねると、担当者がメールを探してくれた。 
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38話. 聞こえない二小節

ピアノが止まったのに、ヴァイオリンは先へ進んだ。 悠真の弓が宙で止まった。ピアニストは鍵盤に手を置いたまま、自分の楽譜をめくった。二人は同時に相手を見た。 「そこは繰り返さないことにしましたよね」 「繰り返していません。ここへ飛ぶことにしたでしょう」 土曜の朝の小劇場は、まだ暖房が行き渡っていなかった。紗月は客席の二列目に、メモを膝に置いて座っていた。昨日貼った付箋は、伴奏譜の上にそのままあった。演奏者たちはリハーサルを始めるのに忙しく、読まなかったらしい。 担当者が客席で手を上げた。 「すみません。整理した資料に、手違いがあったようです」 視線が紗月に向いた。 体が先に立とうとした。謝って楽譜を取ってくれば、この気まずい瞬間は早く過ぎる。紗月は肘掛けを掴み、離した。 「整理するときに間違えた箇所ではありません」 舞台の上の二つの楽譜を指した。 「昨日から、書き込みが違っていました。お二人に尋ねるために貼った付箋が、今もそこにあります」 小さな声だったが、舞台まで届いた。 担当者が黙った。ピアニストは付箋を読み、スマートフォンのファイルを開いた。 「私が送ったファイルですね。でも宮坂さんは、一つ前の版をお持ちです」 悠真が自分の楽譜を見下ろした。誰が間違えたのかを決める会話になりかけた。紗月は舞台脇のテーブルへ行き、二つの資料を広げた。 「どちらにするか決めていただければ、合わせます。お二人が決めた日付が違っていたんです」 演奏者二人がテーブルに来た。紙を指で
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39話. 終えた仕事の代金

遠山は褒めるより先に、抜けているページ数を尋ねた。 日曜の午前、紗月は宿から最終リストを送り、電話を受けた。昨日のリハーサルで刷り直した伴奏譜の枚数が、返却リストに反映されていなかった。 「前のものは捨てたんですか。それとも演奏者が持っていきましたか」 紗月はメモを開いた。演奏者が比較のために両方の版を持っていった。確かに見たのに、返却の数から一つを落としていた。 「最後に、数量を直していませんでした。両方とも貸出中として整理します」 「そうしてください。それ以外は伝わっています。現場の担当者も、次はまず確認の場を設けると言っていますよ」 紗月は修正したリストを送り直した。今回の現場確認とリスト整理の報酬、1万8,000円は、その日の午後に入った。楽譜室の6万円とは別だった。 入院費の表の今日の欄を埋め、来月の欄を見た。まだ空いていた。 少しして、小劇場からまた連絡が来た。 「次の公演もお願いできますか。今回より資料が多いんです」 紗月は予定から先に送った。月曜は資料を引き継ぐ約束があり、平日にはもともとの楽譜室の仕事もあった。担当者は日程が迫っているため、まず他の人を探すと言った。 紗月はメッセージ欄に、午前中だけでもやりますと書いた。けれど資料の量を聞いたのに、終えるべき量を少なく見積もっていた。月曜の約束には代理人も来るし、篠原がまた気を変えるかもしれなかった。 文章を消した。 遠山にもう一度電話をかけた。 「次の現場の仕事は、引き受けられないとお伝えしました。楽譜室の作業は、約束どおりできます」 「それは別ですから。月曜に来る時間は、
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40話. 戻れという命令

篠原直人は、保管センターへ着く前に天城総合へ呼び出された。 月曜の午前、地下鉄の出口を出ようとしていたときだった。黒田室長から電話があり、閲覧前に確認する書類ができたと言われた。午後三時に代理人たちと会う約束までは、時間があった。 篠原は自分の弁護士に、訪問することを知らせた。予定の時刻までに連絡がなければ確認してほしい、とも伝えた。それから天城総合の建物へ入った。 長年持ち歩いた入館証が、ロビーで通らなくなった。 「臨時の入館証をお受け取りください」 警備員が言った。 篠原は首に下げていたカードを見下ろした。昨日までは、他の人が待つドアを、このカードで先に開けていた。今日は警備員の前で、自分の名前をもう一度告げなければならなかった。 ストラップが耳に引っかかった。強く引くと、カードが胸にぶつかった。 代表室に修吾がいた。窓辺のテーブルには、見慣れたファイルが置かれていた。 「ここに座ってください」 修吾は言った。 篠原は椅子を引いた。鞄は両足の間に置いた。 「今日の原資料の閲覧の件で、呼ばれたと伺いました」 「その前に、なぜ外で別の約束をしたのか、聞かせてもらいたいですね」 修吾は紙を向けた。外部保管センターへ送った、相談室の利用申請だった。篠原の申請名の下に、代理人同席と書いてあった。 「自分の責任について、相談しているところです」 「誰に、私の責任を説明するつもりで?」 「私自身の責任と申し上げました」 修吾は笑
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