私が言い終わると同時に、司の顔から血の気が引いていく。「茜音……」彼は手を伸ばす。その声には初めて動揺が出ている。私は後ずさり、彼の手を避けると、そのまま扉を開けて出ていく。背後で、鈴の泣き声がぴたりと止まる。部屋は死に絶えたように静まり返る。その夜、私は母を療養施設から退所させた。一般の総合病院の回復期病棟は、施設ほど環境がよくない。廊下には消毒液の匂いが漂っている。母はなかなか馴染めず、夜中に何度も目を覚ましては、舌足らずな声で私を呼んだ。ベッドの傍らに座り、母の手を握りしめる。「お母さん、もう少しだけ我慢してね」そのとき、スマホが震えた。画面に表示されたのは、司の名前だ
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