All Chapters of あなたが探した妹は、あなたが炎に沈めた: Chapter 21 - Chapter 23

23 Chapters

第21話

洲人はとっさに響子を突き飛ばした。だが自分は避けきれず、刃先がまともに肩へと突き刺さる。たちまち鮮血がシャツを赤く染め、その顔から血の気が引いていった。「洲人!」脩平が叫び声を上げて駆け寄り、萌音を蹴り飛ばして床に押さえつけた。床に倒れた萌音は、それでも獣のように激しく暴れ、脩平にナイフを突き立てた。脩平は低くうめき、残る力を振り絞って、萌音の手首を力任せにひねり、関節を折った。「ああっ!」萌音が悲鳴を上げ、その手からナイフが滑り落ち、床に転がった。萌音はなおも起き上がろうともがいたが、脩平にしっかり押さえ込まれていた。「離して!離してよ!」萌音の声はヒステリックに裏返り、その目は狂気に染まっていた。脩平の表情は氷のように冷たかった。その声は低く沈んでいた。「萌音……お前はもう終わりだ」……病院の廊下には、消毒液のツンとした匂いが漂っていた。洲人と脩平は手術室へと運び込まれた。響子は廊下に立ち、固く閉ざされた手術室の扉を冷ややかに見つめていた。心は少しも揺れなかった。洲人と脩平が自分を守ろうとして傷を負ったことは、わかっている。けれど、それで何かが変わるわけではない。前の人生で、響子は獄中であらゆる責め苦を受けた。腕を折られ、脚を折られ、体には無傷の場所などどこにも残っていなかった。あの痛みは、今もありありと覚えている。因果応報。ただそれだけのことだ。ようやく手術室のランプが消え、医師が出てきた。その顔には疲れの色が浮かんでいた。「おふたりとも、峠は越えました。傷はそれほど深くありませんから、しばらく安静にしていれば回復しますよ」響子はうなずいただけで、それ以上は何も言わなかった。宮近夫妻が慌ただしく病院に駆けつけ、響子が無事なのを見て、長い安堵の息をついた。「響子、大丈夫だった!?」満子の声には気遣いがにじみ、目元がうっすらと赤くなっていた。響子は淡々とうなずいた。その声には、一片の温もりもなかった。「大丈夫です」智史の顔は険しかった。その声は低く沈んでいた。「萌音は……もう警察に連れていかれた。あの子には一生、刑務所で罪を償ってもらうつもりだ。中でも楽には過ごせないよう、手は打ってある」響子は何も答えず、背を向けて病室へと入っていった。病室では、洲
Read more

第22話

約束の1週間が、もうすぐ終わろうとしていた。洲人と脩平の傷はかなり治っていたが、ふたりは無理を言って退院した。「響子、お前のために、とびきりのサプライズを用意したんだ」洲人の声はどこか秘密めいていて、期待を隠しきれない様子だった。響子は冷ややかにふたりを見つめ、皮肉のこもった声で言った。「今度はいったい、何を企んでるの?」脩平は優しい表情を浮かべた。その声は低かった。「とにかく、一緒に来てくれ。今度こそ、お前をがっかりさせたりしない」響子はしばらく黙っていたが、やがてうなずいた。この茶番劇は、まだ終わらないようだ。ならば見届けてやろうと思った。彼らがいったい、どんな手を打ってくるのかを。ほどなくして、響子は彼らの言うサプライズの正体を知った。それは、すべてが生配信される公開謝罪の場だった。なんと大げさで、なんと誠意にあふれた謝罪なのだろう。その噂は瞬く間に広まり、上流社会の人々を騒然とさせた。会場はまばゆい照明に照らされ、カメラは舞台中央に立つ洲人、脩平、そして宮近夫妻に向けられていた。4人の顔には疲労と苦悩が色濃く刻まれ、その表情には深い後悔がにじんでいた。舞台の中央に立った洲人が、低くかすれた声で語り始めた。「今日、俺たちがここに立っているのは、誰かの同情を得るためではありません。ある人に、心から詫びるためです。俺の妹、和山響子に」その声は配信を通じて世界じゅうに届き、数えきれない視聴者が、息を詰めて次の言葉を待っていた。「響子。俺たちが何をしたところで、お前を傷つけた事実を埋め合わせることはできない。それはわかってる。それでも、伝えたいんだ。俺たちは本当に、悪かったと思ってる」洲人の声は詰まり、その表情には苦痛がにじんでいた。言い終えるなり、洲人はがくりと両膝を折り、カメラの前にひざまずいた。「響子、俺たちはお前に、こうして頭を下げるべきだったんだ」その声はかすれていたが、マイクを通じて会場の隅々にまで届いた。会場は騒然となり、画面の向こうの視聴者たちも、一様に衝撃を受けていた。あの宮近洲人が、これまで誰にも頭を下げたことのないような御曹司が、たったひとりに許してもらうために、人前でひざまずいている。続いて、脩平が前へ出た。その手には、ゴルフクラブが握られて
Read more

第23話

智史の声は、低くかすれていた。「響子……俺たちも、もうずいぶん年を取った。今さらだって分かってる。それでも、せめて一度だけ、やり直す機会をくれないか……」会場の人々は声を上げて泣き、画面の向こうの視聴者たちも涙を流していた。そのとき、洲人が顔を上げた。その声には、かすかな希望がにじんでいた。「今日は、約束した1週間の最後の日だ。もし俺たちを許してくれるなら……この配信の会場に、来てくれないか」その言葉が終わると同時に、すべての視線が入り口に注がれた。誰もが息を詰めて待っている。1秒、2秒、3秒……息を殺して10秒数えたところで、会場の扉がゆっくりと開いた。シンプルな黒のロングドレスに身を包んだ響子が、静かに入ってきた。響子は無表情だった。煌びやかな配信会場を冷ややかに見渡し、壇上の人々を眺めるその目は、まるで茶番劇でも見ているかのようだった。「響子!」洲人と脩平が同時に叫び、その顔に喜びが広がった。宮近夫妻も興奮に全身を震わせ、とめどなく涙を流していた。「響子、あなた……私たちを、許してくれるの?」満子の声は震え、その目は期待に満ちていた。響子は冷ややかに彼らを見つめ、皮肉のこもった声で言った。「許す?いいえ。私はただ、この懺悔の結末を見届けに来ただけ」その声は配信を通じて世界じゅうに届き、誰もが驚愕の目で響子を見つめた。洲人の顔から一瞬で血の気が引いた。信じられないという声が漏れる。「そ……それは、どういう……?」響子は冷たく笑い、嘲りのこもった声で言った。「謝罪を聞いたくらいで、私の気が変わるとでも思った?まさか。最初から、あなたたちを許すつもりなんてなかった」脩平の表情が苦痛に歪んだ。その声は低かった。「……じゃあ、どうして1週間待ってくれたんだ?」響子の視線が、冷ややかに彼らを射抜いた。その声には皮肉がにじんでいた。「期待させておいて、それを一気に打ち砕く。あなたたちが昔、私に何度もやってきたことでしょう?私はただ、あなたたちに同じことをしただけよ」その冷たく容赦のない声は、鋭い刃となって、その場にいる全員の胸を深々と貫いた。宮近夫妻の顔から血の気が失せ、その体は小刻みに震えていた。今にも崩れ落ちてしまいそうだった。洲人の表情には苦痛がにじみ、その
Read more
PREV
123
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status