洲人はとっさに響子を突き飛ばした。だが自分は避けきれず、刃先がまともに肩へと突き刺さる。たちまち鮮血がシャツを赤く染め、その顔から血の気が引いていった。「洲人!」脩平が叫び声を上げて駆け寄り、萌音を蹴り飛ばして床に押さえつけた。床に倒れた萌音は、それでも獣のように激しく暴れ、脩平にナイフを突き立てた。脩平は低くうめき、残る力を振り絞って、萌音の手首を力任せにひねり、関節を折った。「ああっ!」萌音が悲鳴を上げ、その手からナイフが滑り落ち、床に転がった。萌音はなおも起き上がろうともがいたが、脩平にしっかり押さえ込まれていた。「離して!離してよ!」萌音の声はヒステリックに裏返り、その目は狂気に染まっていた。脩平の表情は氷のように冷たかった。その声は低く沈んでいた。「萌音……お前はもう終わりだ」……病院の廊下には、消毒液のツンとした匂いが漂っていた。洲人と脩平は手術室へと運び込まれた。響子は廊下に立ち、固く閉ざされた手術室の扉を冷ややかに見つめていた。心は少しも揺れなかった。洲人と脩平が自分を守ろうとして傷を負ったことは、わかっている。けれど、それで何かが変わるわけではない。前の人生で、響子は獄中であらゆる責め苦を受けた。腕を折られ、脚を折られ、体には無傷の場所などどこにも残っていなかった。あの痛みは、今もありありと覚えている。因果応報。ただそれだけのことだ。ようやく手術室のランプが消え、医師が出てきた。その顔には疲れの色が浮かんでいた。「おふたりとも、峠は越えました。傷はそれほど深くありませんから、しばらく安静にしていれば回復しますよ」響子はうなずいただけで、それ以上は何も言わなかった。宮近夫妻が慌ただしく病院に駆けつけ、響子が無事なのを見て、長い安堵の息をついた。「響子、大丈夫だった!?」満子の声には気遣いがにじみ、目元がうっすらと赤くなっていた。響子は淡々とうなずいた。その声には、一片の温もりもなかった。「大丈夫です」智史の顔は険しかった。その声は低く沈んでいた。「萌音は……もう警察に連れていかれた。あの子には一生、刑務所で罪を償ってもらうつもりだ。中でも楽には過ごせないよう、手は打ってある」響子は何も答えず、背を向けて病室へと入っていった。病室では、洲
Read more