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比叡山に伝わる修験道の教えでは、山伏が使う法具にjikininkiを退散させる力があると言われています。独鈷杵や金剛鈴の音は餓鬼が苦手とする清浄な波動を発するのだとか。
実際に、『鳥辺山地獄図』という絵巻物には、錫杖を振るう僧侶の前に餓鬼が逃げ惑う様子が描かれています。仏具が持つ霊力と修行者の信心が相乗効果を生むのでしょう。現代でも、寺院で法要に参加すると、不思議と安心感が得られるのはこのためかもしれません。
中国仏教の『盂蘭盆経』に基づく施餓鬼供養は、jikininkiの苦しみを鎮める代表的な方法です。お盆に先祖供養をする習慣は、実は餓鬼道に堕ちた者を救済する意味も含んでいました。
興味深いのは、餓鬼にも様々な種類がいるという説です。例えば水飲み餓鬼には川の流水を、食物餓鬼にはお米を供えるなど、対象に応じた供物を選ぶ必要があるとされています。仏教の救済は画一的ではなく、個々の事情に寄り添う形で行われるべきだという考え方が透けて見えますね。
仏教の経典や説話を紐解くと、jikininki(食人鬼)から逃れる方法についての示唆が散見されます。特に『餓鬼事経』では、貪欲や執着を捨てることが解脱への道だと説いています。
具体的な方法としては、布施行や供養を通じて功徳を積むことが挙げられます。餓鬼道に堕ちた存在は常に飢えに苦しんでいるとされ、僧侶による読経や施餓鬼会で供物を捧げることで、彼らを救済できる可能性があるのです。大切なのは、単に儀式を行うだけでなく、慈悲の心を持って接することでしょう。
餓鬼と向き合う禅の教えにこんな話がありました。修行僧が夜道でjikininkiに遭遇した時、『お前の飢えは心が生み出した幻だ』と喝破したところ、鬼が消え去ったというのです。仏教では、全ての苦しみは執着から生まれると考えるので、恐怖心を捨てることで逆に餓鬼の力が弱まると言えます。
密教の護摩行のように、煩悩を焼き尽くす行法も効果的だと聞きます。ただし、大切なのは形ではなく、自らの貪欲を見つめ直す姿勢。『般若心経』の『色即是空』を実感できた時、本当の意味で餓鬼から解放されるのかもしれません。
『今昔物語集』にある話で、僧がjikininkiに襲われそうになった際、即座に仏名を唱えて難を逃れたという記録があります。浄土教の影響が強いこの方法は、阿弥陀仏への帰依が餓鬼の脅威から身を守ると考えられていました。
面白いのは、日蓮宗の『南無妙法蓮華経』の唱題行も同様の効果があると信じられている点です。経典の力で餓鬼の呪縛から解放されるという発想は、日本仏教ならではと言えるでしょう。ただし、単なるおまじないではなく、信仰の深さがカギを握っているようです。