ただ、古き夢は還らず資産家の令嬢・白川栞(しらかわ しおり)は、誰もが羨む存在だった。
彼女には大富豪の父と、溺愛してくれる兄・雅人(まさと)がいるだけでなく、父が彼女のために選び抜き、共に育て上げた「三人の完璧な花婿候補」がいたからだ。
速水蓮(はやみ れん)は、その美貌で世界中を熱狂させるトップスター。
瀬名拓実(せな たくみ)は、冷徹で気高い天才デザイナーだが、彼女にだけは優しい笑顔を見せる。
古賀秋彦(こが あきひこ)は、優しく献身的な医師。何よりも彼女を第一に考えてくれる。
彼女が誰を選ぶのか――社交界ではその行方に莫大な賭け金が積まれていた。
そして周囲の予想を裏切り、栞が選んだのは秋彦だった。
結婚から三年。二人は誰もが認める「おしどり夫婦」として、片時も離れず愛し合っていた。
だが、栞の心には誰にも言えない棘が刺さっていた。
なかなか子宝に恵まれず、来る日も来る日も病院に通っていたのだ。
そんな彼女を、秋彦はいつも優しく抱きしめた。
「栞、そんなに自分を追い詰めないでくれ。君さえいれば、子供なんていらないよ。
養子を迎えたっていいんだから」
この人と結婚して本当に良かった――栞は心からそう信じていた。
誕生日のあの日、病院からある検査報告書が届くまでは……