灰になった愛一ノ瀬蓮(いちのせ れん)と共に過ごした九年間、私は彼のために九人の女との関係を清算してきた。そして十人目は、私自身だ。
別れを決意し、私はこれまで九回差し出してきた手切れの合意書を手に取り、そこに自分の名前を署名した。
蓮にそれを渡すと、彼は一瞬きょとんとしたが、すぐに笑みを浮かべて言った。
「待たなくていいの?もしかしたら、本当にお前と結婚する気になったかもしれないのに」
この九年間、そんなセリフは嫌というほど聞かされてきた。
だが、九人目の女の後始末をした時、私は愕然とした。
その相手は、私が初めて彼のために女性トラブルを解決した際に出会った、あの時の少女だったのだ。
彼女は目を細めて微笑み、私にこう言った。
「意外だわ。あれから何年も経って、まだ彼のそばにいるのがあなただったなんて」
胸が締め付けられるような痛みに襲われ、私はようやく悟った。
九年間も囚われていたこの茶番劇から、今こそ降りるべき時なのだと。