'Cry of Fear'は無料の中でも特に音響演出で底力を見せる作品だと思う。足音の間隔、遠くで鳴るラジオの雑音、扉の軋みが重なった瞬間に生理的な不安が来る作りで、単に大きな効果音を鳴らすのではなく「何が聞こえないか」を利用して緊張を持続させる手腕が見事だ。ヘッドフォン越しに左右の定位や距離感を感じられるシーンが多く、敵の接近を聴覚だけで察知する場面もある。
個人的に印象深かったのは、'The Haunting of Hill House' のように家そのものが語り手になる作品を訳したときだ。物の語りかける抑揚や間を損なわないよう、文体を統一しつつも部分的に言葉のリズムを崩すことで、読者に「そこに居る」感覚を行き渡らせるよう努めた。そうして初めて、原作の不穏さが日本語で自然に立ち上がると感じている。