怖い話まとめ2

怖い話まとめ2

last updateLast Updated : 2025-12-21
By:  東雲桃矢Updated just now
Language: Japanese
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怖い話まとめ第2弾 様々な怪談100本をまとめた怪談集となっております 前作にも出たR子やSも、登場するとかしないとか……?

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Chapter 1

ブロック塀の小人

 小学生の時、歩き通学だったんだけど、通学路に変な家があった。震度4くらいで潰れそうなほどボロい日本家屋なんだけど、ブロック塀は洋風で、置物とかを置くための穴が6つ開いてて、それぞれ髪色の違う小人の置物が置かれてた。

 誰が言い出したのか、小人の置物に悪さをすると呪われるという噂が子供達の間で流れてて、通学路でその家の前を通ると、「お前行けよ」と悪ふざけをしていたものだ。

 俺が小2の時、小6で班長のAってやつが、小人の置物をわざと壊した。通学中、4年生が俺達下級生に、例の噂を話したんだけど、俺達はすっかり怖がっちゃって、中には家の前を通るのが嫌だと泣き出す子もいた。

 Aは「そんな噂馬鹿らしい」って言って、赤い髪の小人の置物を叩きつけて壊した。

 誰もが呆然としていて、Aは得意げに、「ほらな、何もないだろ? はやく学校行くぞ。遅刻したら俺が怒られるんだからな」と言い、未だに泣いてる子の腕を引っ張って登校した。

 下校前、歩き通学は班ごとに別れて、班長の6年生が全員いるか確認してから先生に報告して帰るんだけど、その日、Aはなかなか姿を見せない。6年の担任の先生が来て、Aが早退したことを知らせた。

 副班長の5年生と一緒に帰ることになったんだけど、不思議なことがあった。

 今朝、確かに赤髪の小人はAによって叩き壊されてたはずなのに、下校時にはもういる。髪色は同じだけど、顔とポーズが違うことから、家主が新しいものを買ったんだろう。

 時が経ち、俺が6年生で班長になった。歳の離れた小学2年生の弟と一緒なのは、ちょっと気恥ずかしい。

 2年生は弟の他にふたりいて、3人は俺や他の子達が注意しても、上履き入れをぶん回して遊んでた。弟だけならぶん殴って止めるんだけど、他の子はどうしようもないし、ここで弟を殴って騒ぎになったら嫌だから我慢した。

 何かが割れる音がして振り返ると、例の日本家屋の前にいて、弟が上履き入れで小人の置物を割ってしまったらしい。破片などは家の敷地内だ。

「何してんだよ!」

 我慢できずに弟をぶん殴って、副班長の女子に先に行くように言うと、弟の首根っこをひっ捕まえて、インターホンを鳴らした。

 出てきたのは意外にも若くて美人なお姉さんで、言葉が詰まった。

「あら、どうしたの?」

「すいません、うちのバカが、あそこの置物割っちゃったみたいで。こいつ、お年玉貯金してるんで、そっから弁償させます」

 弟の頭を掴んで一緒に頭を下げると、笑い声が降ってきた。顔を上げると、お姉さんは笑ってる。

「君は弟思いのいい子だね。大丈夫、小人は■■ってもらうから」

 一部聞き取れなかったけど、許してもらえたと思った俺達は学校に向かう。

「兄ちゃんひどいよ。お年玉は僕のだ」

「バカ。割ったら弁償しないといけないんだよ」

 いくら言い聞かせても、弟はすねたまま。まだ小学2年生の弟に俺から言ってもわからないだろ。あとで両親に厳しく叱ってもらおうと思いながら登校した。

 2時間目の体育が終わって教室に戻る途中、弟の担任に捕まった。体育館に行くには、1,2年生の教室の前を通らないといけないんだ。

「弟くん、いきなり高熱出しちゃって。今保健室で寝てるの。お母さんがもうすぐ来ると思うんだ」

「分かりました。うちのがすいません」

 2時間目の後は長めの休み時間があるから、俺は友達に保健室に行ってくることを伝え、保健室に行った。

 弟はベッドの上でうなされてた。俺が保健室に入って3分もしないうちに母さんが来たので、登校中は元気だったこと、日本家屋の置物を壊したことを伝えた。

 保健室から出ると、弟の荷物をまとめて持ってくる担任とすれ違った。

 学校から帰ると、母がパニック状態だった。落ち着かせて話を聞くと、家に弟を連れ帰った後、ゼリーなどを買いに出かけたらしい。

 帰って部屋に入ると弟はいなくて、そのかわり、置物のかけらがあったと言う。

 嫌な予感がして日本家屋に行って小人の置物を見ると、ひとつ新しくなってるものがある。髪色は青だが、顔つきや服装が弟に似ている。

 俺は小人の置物を抱えてインターホンを鳴らした。今朝のお姉さんが出てきて、俺を見るなりにやっと笑う。

「今朝の子じゃない。どうしたの?」

「あ、あの! これ、俺の弟ですよね!? 戻してください!」

「ダメよ。割ったのはその子なんだから」

「警察に言いますよ」

「警察が信じると思う? 弟が置物にされました。なんて言っても、イタズラだとしか思わないんじゃない?」

 確かにお姉さんの言う通りだ。それでもどうにかしてもらおうと思って、何度も頭を下げたけど、無理だと言われた。

「一度置物になったら戻らないの。それ、元に戻しといてね。じゃないと、今度は君が置物になるから」

 お姉さんは一方的に言うと、ピシャリと戸を閉めてしまった。

 肩を落として置物を戻しに行く途中、ふと、Aのことを思い出した。置物を戻してから赤髪の小人を見ると、Aと似ていた。

 もうここを通りたくない。でも、俺の一存で通学路を変えることなんてできない。考えた結果、この家の人がニヤニヤしながら登下校している俺達を見たり、ちょっかいかけたりしてると嘘をつくことにした。

 先生に早速相談すると、先生は呆れ返ったようにため息をついた。

「バカなこと言うな。あの家はとっくの昔から空き家だよ」

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 小学生の時、歩き通学だったんだけど、通学路に変な家があった。震度4くらいで潰れそうなほどボロい日本家屋なんだけど、ブロック塀は洋風で、置物とかを置くための穴が6つ開いてて、それぞれ髪色の違う小人の置物が置かれてた。 誰が言い出したのか、小人の置物に悪さをすると呪われるという噂が子供達の間で流れてて、通学路でその家の前を通ると、「お前行けよ」と悪ふざけをしていたものだ。 俺が小2の時、小6で班長のAってやつが、小人の置物をわざと壊した。通学中、4年生が俺達下級生に、例の噂を話したんだけど、俺達はすっかり怖がっちゃって、中には家の前を通るのが嫌だと泣き出す子もいた。 Aは「そんな噂馬鹿らしい」って言って、赤い髪の小人の置物を叩きつけて壊した。 誰もが呆然としていて、Aは得意げに、「ほらな、何もないだろ? はやく学校行くぞ。遅刻したら俺が怒られるんだからな」と言い、未だに泣いてる子の腕を引っ張って登校した。 下校前、歩き通学は班ごとに別れて、班長の6年生が全員いるか確認してから先生に報告して帰るんだけど、その日、Aはなかなか姿を見せない。6年の担任の先生が来て、Aが早退したことを知らせた。 副班長の5年生と一緒に帰ることになったんだけど、不思議なことがあった。 今朝、確かに赤髪の小人はAによって叩き壊されてたはずなのに、下校時にはもういる。髪色は同じだけど、顔とポーズが違うことから、家主が新しいものを買ったんだろう。 時が経ち、俺が6年生で班長になった。歳の離れた小学2年生の弟と一緒なのは、ちょっと気恥ずかしい。 2年生は弟の他にふたりいて、3人は俺や他の子達が注意しても、上履き入れをぶん回して遊んでた。弟だけならぶん殴って止めるんだけど、他の子はどうしようもないし、ここで弟を殴って騒ぎになったら嫌だから我慢した。 何かが割れる音がして振り返ると、例の日本家屋の前にいて、弟が上履き入れで小人の置物を割ってしまったらしい。破片などは家の敷地内だ。「何してんだよ!」 我慢できずに弟をぶん殴って、副班長の女子に先に行くように言うと、弟の首根っこをひっ捕まえて、インターホンを鳴らした。 出てきたのは意外にも若くて美人なお姉さんで、言葉が詰まった。「あら、どうしたの?」「すいません、うちのバカが、あそこの置物割っちゃったみたいで。こいつ、お年玉貯金
last updateLast Updated : 2025-12-21
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 小さい頃、確か幼稚園児とか、小学1,2年生の頃だと思う。今考えると不潔だなって思うけど、朝から晩まで同じコップを使ってた。 そのコップがお気に入りっていうのもあるけど、新しい飲み物を飲む度に洗うのがめんどくさかったから、親がコップを取り上げて洗わない限り、例え飲み物が変わろうが、同じコップを使い続けてた。 父が言ってたから、土日だったと思う。麦茶を飲んでたんだけど、母がオレンジジュースを買ってきて、麦茶を飲みきってからオレンジジュースを注ごうとしたの。そしたら父が、「コップを洗わないとおくちさんが出て、飲み物をダメにするぞ」って言ってきたの。 今まで幽霊とか見たことなかったし、父が適当に嘘付いてるんだと思って聞かなかった。 数日後、私はいつものように飲み物を飲んでて、違うものが飲みたくなったからジュースを注いだの。飲もうとしたらドブみたいなにおいがして、コップの中を見たら、石で出来た唇が浮かんでた。 口が大きく開いて、ドブ水みたいなのを吐き出してた。 怖くて気持ち悪くてコップを投げ出したら父が来て、「どうした?」って言うから、拙い言葉でさっき見たものを説明したの。 そしたら父は「ほら、言っただろ? おくちさんだよ。おくちさんはばっちいジュースが大好きだから、コップを洗わないお前のところにも来たんだよ」って言ってた。 それ以来私はこまめにコップを洗うようになった。それからおくちさんは見てない。
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last updateLast Updated : 2025-12-21
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 私が通ってた学校では、小学4年生から家庭科の授業でミシンを使うんだけど、1台だけ、使用禁止のミシンがある。 そのミシンは比較的新しく見えるし、クローバーのプリントもされてて、すごく可愛い。 他のミシンは可愛いプリントがあるのなんてほんの一部だし、どれもうっすら黄ばんでいて、使おうと思わない。ミシンを選ぶときは、みんな極力白に近い色のものを選んでた。 クラスメイト全員が一気に押し寄せてミシンを取りに行くから、時々バレないだろうと思って使用禁止のミシンを使おうとする子がいるんだけど、定位置においてあるからか、先生はすぐに気づいて違うミシンを使うように言う。 皆、特に女子は、可愛いミシンを使えなくて悔しがっていた。 Aちゃんっていう子がいるんだけど、彼女が日直の日、家庭科があって、Aちゃんが「私、今日絶対あのミシン使うんだ」って言ってた。 家庭科の時間になると、Aちゃんは予告通り、例のミシンを持ってきた。「すごい! どうやって持ってきたの?」「日直だから先に来て鍵を開けるでしょ? その時、他のミシンと場所を入れ替えてたの」 その手があったかと、同じグループの子達は膝を叩いた。 針や糸をセットして縫い始めてすぐ、向かいの席にいるAちゃんが悲鳴を上げた。ミシンの針がAちゃんの指を貫いていたのだ。 Aちゃんはミシンから手を放したのに、ミシンは動き続けて、Aちゃんの指を布に縫い付けた。 先生が慌てて来て、救急車を呼んだ。私達は教室に戻され、Aちゃんは先生と一緒に病院に行った。 教室で皆があのミシンはなんなのか話し合っていると、教頭先生が来て、そのミシンについて話してくれた。 7年前、女の子が誤作動で自分の指を縫ってしまった。今日のAちゃんのように。それからそのミシンを使うと絶対に同じような事故が起きる。だから使用禁止にしたらしい。「そんなミシン、捨てたほうがいいんじゃないですか?」「その通りですね。我々も捨てようとしましたが、家庭科室からミシンを出そうとすると、事故が起きてそれどころじゃなくなるんです。お祓いをするにしても、お金がかかりますし、誰もお金を出したがりません。なので、ミシンは使用禁止にしておこうということになったんです。 我々がケチなせいで、みなさんをキケンに合わせて申し訳ない」 教頭先生は深々と頭を下げると、アニメのDVDを見
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 夕方の5時半くらいだろうか。車で退勤してると、いつも同じ女が歩いているのが見える。女は茶色に染めた長い髪を風になびかせ、腕を振りながら歩いてる。 ラジオ体操で腕を回して体をねじる動きあるだろ? あの腕の動かし方で歩いてる。一応人が歩くスペースはあるけど、ちゃんとした歩道じゃないし、狭いから、危ないなと思って見てた。 休日の夕方、妻にお使いを頼まれて車で行こうとしたら、「健康のために歩いてきたら?」と言われたので、徒歩でたいだい1キロ先にあるコンビニに向かった。 例の女に出くわして、嫌だなと思いながら、速歩きで抜かしてった。すれ違いざまに女がブツブツ何か言ってたけど、なんて言ってるのかは聞き取れなかった。 しばらくして、友達を車に乗せてうちに行くことになった。時間はあの女が出没する時間。「そういやさ、変な女いるんだよね。腕を振り回しながら歩いてる女。若いし、ボケてるわけじゃないと思うんだけどさ」「それってあの人?」 窓の外を見ると、いつもの女がいた。相変わらず腕を振り回しながら歩いてる。「そうそう、ソイツ。ダイエット法なのかね? なんにせよ、危ないからやめてほしいんだけど」「ダイエットじゃないよ。腕に霊が憑いてる。子供の霊だ」 そう言えば友達に霊感があったのを思い出した。下ろすように言われたので、路肩に寄せて停めると、友達はその女の元へ行く。 友達が女の腕を軽く振り払うと、泣きながら何度も頭を下げていた。戻ってきた友達を乗せて家に帰る。家まで車で1分前後のところだから、家に帰ってからあの女のことを聞こうと思ってた。「おかえり。ねぇ、ちょっと聞いて」 帰ると妻は興奮気味で駆け寄ってくる。友達とは面識がある(というか、この友達のおかげで結婚した)ので、妻は恥じらったりする様子はない。「とりあえず家にあげてくれよ」「それもそうね、ごめんなさいね」 リビングで腰を落ち着けると、妻が話しだした。あの腕振り女は男遊びをしていて、妊娠しても堕ろして、また男――。といった生活を送っていたらしい。 何人子供を堕ろしたか分からないと言われてる。「マジか――」「マジよ」「じゃなくて、さっきその女がいて、こいつが車停めろって言うから、停めたんだよ」 妻は興味深そうに友達を見る。「水子の霊が腕に憑いてたから、本当だと思う。あの人、「放して、放して
last updateLast Updated : 2025-12-21
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利き手を嫌う猫
 うちでは私が高校生の頃から猫を飼っている。というのも、私が猫を飼いたがっていたけど、祖父が反対していたから、祖父が亡くなった1年後に、ようやく飼えたというわけだ。 正直猫を飼える日が来るとは思ってなかったから、母が「猫飼う?」と言い出したときは驚いた。 今まで飼ってきた子は皆ほど猫なんだけど、元々1匹だけのつもりが、保護してた人が「この子はあの猫ちゃんと一緒だったから、一緒にもらってくれる?」と言われ、いきなり2匹飼うことになった。 最初に飼ってた子をきなこ、くろごまとしておこう。猫でも一応仮名使わせてね。きなこが亡くなってから大福がうちにきて、くろごまが亡くなった。そのあと大福もなくなって、うちに猫はいなくなったんだけど、数カ月後に豆大福と黒蜜がうちに来た。 私は元々左利きだったんだけど、包丁を使う仕事をして、左利きよりの両利きになったの。 黒蜜は来たばかりの頃はなかなかケージから出なくて心配だったんだけど、今ではすっかり甘えん坊さんになってね。近くに来て体を擦り付けてきたりしてすごく可愛い。 黒蜜は私の右側に座りたがる。時々左側に来るんだけど「なんか違うな」って感じで、結局右側に来て、私の右手にすりすりしてくる。 黒蜜が撫でてほしそうにすり寄ってきたから撫でたんだけど、引っかかれて、手の甲に大きな傷ができた。結構深くて、半年以上経った今でも、傷跡が残ってる。 またしばらくして撫でてほしそうにしてたから撫でたら、また引っかかれて威嚇された。 2回目に引っかかれた時に気づいたんだけど、2回とも左手を引っかかれてたんだ。偶然だろうって思ってたんだけど、なんとなく両手を差し出したら、左手は猫パンチされて、右手にすり寄ってきた。 霊感がある友達のR子になんとなく言ってみたら、「あなたの左手にはくろごまちゃんが憑いてる。黒蜜ちゃんは嫉妬して、左手に攻撃してるんだと思う」と言った。 くろごまは初めて飼った子で、一目惚れした子。向こうもそうだったのか、「にゃっにゃっ」ってかすれるような声で、私の膝の上に来たの。人懐っこい子なのかなって思ってたけど、来客があると絶対に姿を見せない子だった。 特に私に懐いていて、食事をしてると膝の上に乗ってくるし、目が合うと私のところに来て、甘えてくる子だった。「悪霊ってわけじゃないんでしょ?」「うん、甘えてるだけ」
last updateLast Updated : 2025-12-21
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持って行く
 子供の頃、不幸体質だった。くじを引けば必ずハズレだし、役割を決めるじゃんけんをすれば、必ず嫌な役をすることになる。友達数人と悪さをすると、捕まって怒られるのはいつも僕だし、損ばかりしてきた。 そのことを一緒に住んでる爺ちゃんに愚痴ると、爺ちゃんはいつも、「後で持っていってやるからな」と言って、大きな手で僕の頭を撫でてくれました。 僕が小6の頃から、爺ちゃんは体調を崩すようになり、入退院を繰り返すようになりました。 中2の頃、爺ちゃんはもう長くないらしく、最期は家で過ごしたいという要望を叶えるため、家で寝たきりでいました。 英語の授業中、担任兼数学教師が教室に来て、僕に今すぐ帰るように言いました。なんでも、爺ちゃんが危篤で、僕のことを呼んでいるとか。 担任は僕を車に乗せて、家まで送ってくれました。 家の前に着くと母さんがやきもきした様子で僕を待ってて、車から降りるとお礼もそこそこに、家の中に引っ張られました。 爺ちゃんの部屋に行くと、婆ちゃんが涙をこらえながら爺ちゃんの手を握っていて、僕に気づくと、手招きをしました。 爺ちゃんの隣に座ると、爺ちゃんは手を出してきて、弱々しい声で「手、出せ」と言いました。 爺ちゃんは僕の手を握ると、「持って行くからな――」と言い、そのまま息を引き取りました。不思議なことに、爺ちゃんが事切れるのとほぼ同時に、爽やかな風が吹いた気がします。 その後、不幸体質だったのが嘘みたいな豪運ぶりで、28歳あたりまで、じゃんけんやくじなどは負け無しでした。 28歳の爺ちゃんの命日まで続いてたので、たぶん帳尻を合わせるために勝ち続けてたんじゃないかと思います。 今は7:3くらいの勝率で、普通の人よりちょっと運がいいくらいです。たぶん、これが僕の本来の運なんだと思います。
last updateLast Updated : 2025-12-21
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星詠み
 私の婆様の不思議な話。オチらしいオチはありません。婆様は星が綺麗な田舎に住んでる。両親が何回か同居を持ちかけてたんだけど、「都会は星が見えないから仕事が出来ない」と言って断ってました。 なんでも婆様は星詠み師で、村の中でも一目置かれる存在でした。 私も婆様の凄さは知ってるので、胡散臭いとは思いません。例えば、春休みに婆様のところに遊びに行って、帰宅予定日の朝、「星の巡りが悪いから、明日にしなさい」と言ったので、言われた通り、もう1泊したんですが、私達が通る予定だった道で大きな事故が起きました。 他にも、登校する直前に婆様から電話が来て、傘を持っていくように言ってきたので持っていったら、天気予報は晴れだったのに、土砂降りの雨が降ったり、高校生の頃、片想いをしていたのですが、「今好きな人がいるでしょ? ろくでもないからやめなさい」と言ってきたこともあります。翌日、友達がその人と付き合い始め、1週間後には別れました。しかも、その男子は友達からお金を借りてから別れたのです。 時には人の死も予知というか、星詠みで知ることができるみたいで、「お前のところの社長さん、長くないから、感謝ははやめに伝えな」と父に言ったこともあります。 婆様のお言葉から4日後、その社長さんは亡くなったそうです。 いつしか私は婆様に憧れるようになり、星詠み師になりたいと思って婆様にどうしたら星詠み師になれるのか聞いたことがありますが、「星に好かれてないと難しいねぇ。星は人を選ぶから」とのこと。 私は好かれてるのか聞いたら、「好かれてはいるけど、交流するつもりはなさそうだよ。だから、難しいだろうねぇ。けど、お星様が見守ってくれるから、悩み事が出来たら、星空を見に行くといいよ」と言いました。 婆様の言う通り、誰かに相談しても解決できなかった悩み事も、星を見ながらだと整理整頓できて、解決するのです。 すべての悩みが解決するわけではありませんが、星を見て解決できたことも多々あったので、ごみごみした都会から、星が綺麗な田舎に引っ越してみました。 それで一気に運が良くなったということもありませんが、都会にいた時よりは幸せな気がします。
last updateLast Updated : 2025-12-21
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 俺は生まれも育ちも田舎なんだけど、変な風習があった。村のはずれに竹藪があって、竹藪の奥には祠がある。 祠には何か良くないものを封印してるとかで、物心付く前から、竹藪に近づくなって言われてる。 家ごとに違うんだけど、子供が近づかないように「不審者がいるから」とか「人殺しが逃げて今も住んでる」とか、現実的な嘘をつき続けられる。 先に祠がどうとか書いたけど、祠の存在について知るのは小学3年生になってから。 俺と同い年の子供は全部で3人いて、俺、Aくん、Bちゃんの3人だった。俺達は歳の近い子がいないというものあって、男女関係なくいつも一緒に遊んでた。 小学3年生になって始業式から帰ると、俺達はそれぞれの祖父母に連れられ、竹藪の前に連れてこられた。竹藪には、村長もいた。「まずは小学3年生になれて、おめでとう。これはささやかだけど、村の皆からのプレゼントだよ」 村長は俺達にリュックをくれた。男女の違いはなく、俺もAくんもBちゃんも、同じデザインのものだった。リュックの中には何か入ってて、ちょっと重かった。「3人共今までおうちの人に、竹藪についてなんて聞いてた?」「不審者がいるって言ってた」 俺が答えると、Aくんは殺人鬼、Bちゃんは小さい女の子が好きな犯罪者がいると答えた。 村長は頷きながらそれらを聞くと、「それね、全部嘘なんだよ」って言った。 俺達は驚いた。だって、大人達には嘘はいけないことって教わってたから。その大人が俺達に長年嘘をついてたなんて、あまりにもひどい話だと思い、抗議した。村長は「ごめんね、嘘はいけないんだけど、理由がある嘘なんだ。聞いてくれる?」と言う。 村長いわく、この先に祠がある。祠には強い悪霊が封じられてて、近づく人達に悪さをするから入っちゃいけない。でも、これを子供達にそのまま伝えると、面白がって肝試しをする。だから今まで不審者とか殺人鬼っていうことにしてたらしい。 俺は近づいたことなかったんだけど、Aくんが前に近づいたら、「殺すぞ。殺されたくなかったら向こうに行け」という声が竹藪から聞こえてきたことがあったらしい。Aくんがそのことについて質問すると、誰かの声を吹き込んで、近づいたらそれが流れる機械が設置されてたらしい。 今日は俺達に話があるから電源を切ってるとか。「今から皆に、しばらく祠の前にいてもらいます」「どう
last updateLast Updated : 2025-12-21
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