怖い話まとめ1

怖い話まとめ1

last updateLast Updated : 2025-12-21
By:  東雲桃矢Completed
Language: Japanese
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オリジナルの怪談を100本詰め込んだ短編集 神父が会った不思議な少女に、黒い救急車 霊媒師御用達の温泉など、様々な怪談がズラリ

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Chapter 1

少女の懺悔

これは私が神父になったばかりの頃のお話です。私がいる教会には告解室があります。懺悔室と言ったほうが伝わるでしょうか?

 ラムネが恋しくなる真夏のこと。誰かが告解室に入ってきました。

「神父様、いらっしゃいますか?」

 凛としつつも幼さの残る声に驚き、顔を上げると、ひとりの少女がいて驚きました。

 我々神父からは相手の顔が見えますけど、相手からは我々の顔が見えない造りになっています。

 これは私個人の考えなのですが、勇気を出して自らの罪を告白するお相手の顔を一方的に見るのは良くないと思い、うつむきながら聞くようにしています。結局、話を熱心に聞くあまり、相手の顔を見ることになるのですが。

 少女はだいたい中学生くらいでしょうか? 喪服のように真っ黒で、飾り気のないワンピースを着ていました。

 この年齢の者が来ることにも驚きましたが、彼女の表情に驚きました。

 懺悔をしに来る者は、自らの罪に押しつぶされそうな、この世の終わりとでも言いたげな顔をする者が多いのです。人それぞれではありますが、鬱々とした顔をしているものです。

 ですが、眼の前の少女はどうでしょう?

 無。

 これ以上ないほどの無表情。

 よく、表情のない者のことを鉄仮面だとか冷たい印象だとか言いますが、そのようなものさえ、一切ありません。

 冷たさも温かさもない、無。

 そう、まるで無機物的な無表情だったのです。

「神父様?」

 少女に呼ばれ、我に返り、彼女に謝罪しました。

「申し訳ありません、少し、ぼんやりしてしまって」

「今日も暑いですからね。体調は大丈夫ですか? もし、良くないのなら出直しますが……」

「いえ、大丈夫です。ご心配おかけして申し訳ありません」

 少女の声音は慈愛に満ちていましたが、表情は相変わらず無機物的でした。

「神父様、私の話を聞いて、私に非があるかどうか、判断してほしいのです。よろしいでしょうか?」

「えぇ、もちろん、かまいませんよ」

 少女の年齢にそぐわない表情や礼儀正しさに、居心地の悪さを感じながら、彼女の話を聞こうと座り直します。

「私、R子と言います。中学3年生です。2ヶ月前、祖父が亡くなったんです」

 少女は淡々と話し始めました。この時私は、祖父になにかひどいことを言ってしまったのだろうかと考えていました。

「子供の私には、親戚とか、そういうの分かりません。2軒だけ、お盆やお彼岸なんかで回る家があって、それ以外にも一応親戚? 親族? が、いるのは分かっていましたが、皆の関係性はよく分かりません。中には初めて見る人もいました」

 主語こそ抜けてはいますが、葬式に来た人達のことでしょう。

「私はずっと、母の背中をさすっていました。家で皆が集まってる時、ひとりの女性が近づいてきたんです。たぶん、40代くらいで、見たことのない人でした。その人は霊感があると言って、祖父の言葉を母に伝えてきたんです」

「その女性を介して、お祖父様はなんとおっしゃったのですか?」

 私の問に、少女は静かに首を横に振ります。私はじっと、彼女が再び口を開くのを待ちました。

「その人が言うには、「◯◯(母の名前)きばれや」と言ったそうです」

 そう言う少女の顔に、初めて感情があらわになりました。それはまごうことなき怒り。少女は自称霊感女に怒りを抱いているようでした。

「神父様、私や母もそうなんですが、祖父もここが生まれ故郷で、よそで暮らしたことなんてないんです」

 この一言で、霊感女の嘘が私にも分かりました。詳しい場所は明かせませんが、ここは関東のどこか。生まれも育ちもここなら、「きばれや」なんて言葉は出てきません。

「祖父は訛りがひどいですけど、「きばれや」なんて言いません。その女は嘘をついているんです」

「えぇ、そのようですね。地域の方々と交流がありますが、そのような言葉を使う方とは会ったことがありません」

 同意すると、少女は満足げに小さく微笑みながら頷きます。ある程度の信頼を得られた気がしました。

「神父様、信じられるか分かりませんが、私には俗に言う霊感があります。でも、そんなに強くないんです。昔は毎日見えてたのですが、成長するにつれ、見える日が少しずつ減っていってるんです。それでも、私の言葉は彼らに通じる」

 ぐにゃりと歪んだ少女の狂気的な笑みに、情けない声が出そうになるのを、必死に堪えました。それほど、R子さんの笑みには邪悪なものが込められているように感じたのです。

「それで私、昔からよく遊んでくれる子に頼んだんです。「あの嘘つき女に天誅を」って。そしたら49日、その自称霊感女を連れてた男の人が来たんですけど、あの女はいなかった」

 ひひっ、と不気味な笑い声に、息をすることさえ難しくなりながらも、平静を取り繕うのに必死でした。

「この前一緒にいた人はどうしたのか聞いたら、なんて言ったと思います?」

「さ、さぁ……、見当もつきませんね」

 口の中が干上がり、喉が張り付き、絞り出すようにそう言うのがやっとでした。私はもう、恐怖でおかしくなりそうでした。

 眼の前にいるのは本当に14,5の少女なのか疑いたくなるほど邪悪な空気が、告解室どころか、教会の中に満ち溢れ、この世に存在する神聖なものすべてが彼女に穢された気がしてならないのです。

「轢かれて死んだんですって♪」

 少女は歌うように言いました。その後も、轢かれたけどすぐに死ななかったとか、渋滞で救急車が遅れたとか、きっと苦しみながら死んだとか、まるでオペラのように高らかに言っていた気がします。

「私が見えないお友達に頼んだからだと思いますか? 私の願い事は罪でしょうか?」

 少女は思い出したかのように例の無機物顔になり、淡々と聞いてきます。

「きっと、偶然でございましょう」

「そう、偶然、偶然♪ 私は悪くなぁい♪」

 ついに彼女は立ち上がり、くるっと回ると、見えないはずの私に向かって一礼しました。

「話を聞いてくださり、ありがとうございました。おかげで気が楽になりました」

 耳でR子さんが出ていくのを感じ取り、教会の扉の音がすると、ようやく息を大きく吐くことができました。

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少女の懺悔
これは私が神父になったばかりの頃のお話です。私がいる教会には告解室があります。懺悔室と言ったほうが伝わるでしょうか? ラムネが恋しくなる真夏のこと。誰かが告解室に入ってきました。「神父様、いらっしゃいますか?」 凛としつつも幼さの残る声に驚き、顔を上げると、ひとりの少女がいて驚きました。 我々神父からは相手の顔が見えますけど、相手からは我々の顔が見えない造りになっています。 これは私個人の考えなのですが、勇気を出して自らの罪を告白するお相手の顔を一方的に見るのは良くないと思い、うつむきながら聞くようにしています。結局、話を熱心に聞くあまり、相手の顔を見ることになるのですが。 少女はだいたい中学生くらいでしょうか? 喪服のように真っ黒で、飾り気のないワンピースを着ていました。 この年齢の者が来ることにも驚きましたが、彼女の表情に驚きました。 懺悔をしに来る者は、自らの罪に押しつぶされそうな、この世の終わりとでも言いたげな顔をする者が多いのです。人それぞれではありますが、鬱々とした顔をしているものです。 ですが、眼の前の少女はどうでしょう? 無。 これ以上ないほどの無表情。 よく、表情のない者のことを鉄仮面だとか冷たい印象だとか言いますが、そのようなものさえ、一切ありません。 冷たさも温かさもない、無。 そう、まるで無機物的な無表情だったのです。「神父様?」 少女に呼ばれ、我に返り、彼女に謝罪しました。「申し訳ありません、少し、ぼんやりしてしまって」「今日も暑いですからね。体調は大丈夫ですか? もし、良くないのなら出直しますが……」「いえ、大丈夫です。ご心配おかけして申し訳ありません」 少女の声音は慈愛に満ちていましたが、表情は相変わらず無機物的でした。「神父様、私の話を聞いて、私に非があるかどうか、判断してほしいのです。よろしいでしょうか?」「えぇ、もちろん、かまいませんよ」 少女の年齢にそぐわない表情や礼儀正しさに、居心地の悪さを感じながら、彼女の話を聞こうと座り直します。「私、R子と言います。中学3年生です。2ヶ月前、祖父が亡くなったんです」 少女は淡々と話し始めました。この時私は、祖父になにかひどいことを言ってしまったのだろうかと考えていました。「子供の私には、親戚とか、そういうの分かりません。2軒だけ、お盆
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水晶
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last updateLast Updated : 2025-12-21
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黒い救急車
 これは私が子供の頃の話。いたずらをすると、両親や祖父母から、「黒い救急車に連れてかれちゃうよ」と言われました。 子供ながらに、「子供を脅すための迷信だ」と思っていました。 クラスメイトのAちゃんは女の子だけどイタズラ好きで、大人たちも手に負えない悪ガキでした。爬虫類を誰かの机の中に入れたり、独身の先生の背中に「彼氏(もしくは彼女)募集中」の紙を貼り付けたり――。 他にも大人に怒られるようなことばかりしていました。 私とAちゃんは電車で通学していて、同じ駅で乗り降りしてました。帰り、ホームには私とAちゃんしかいませんでした。家に近いホームは有人駅でしたが、学校側の駅は無人駅です。 この日何故私とAちゃんしかいないかというと、当時の私達は小学2年生で、毎週水曜日、1,2年生は給食を食べたら帰るのです。 田舎なため、電車が来るまで20分ほど待たなくてはいけません。子供の20分って、すっごく長くてすっごく暇なんですよね。 私はあまりAちゃんと関わりたくないこともあって、お絵かきをしたり、図書室で借りたりした本を読んだりしてました。 話しかけられても、「本を読んでるから」と言えば、話さなくて済むとも思っていたのです。 暇を持て余したAちゃんは、砂利を集めてくると、線路に向かって投げました。先生や大人たちに「線路に石を投げたら脱線して皆死ぬから絶対にしちゃいけない」と言われていたので、Aちゃんに注意しました。 でもAちゃんは、「こんな石ころで事故るわけないじゃん」と言ってやめませんでした。 私のほうが体が小さいし、何されるか分からないので、黙って電車を待っていました。 しばらくすると、救急車がこちらに向かって来ます。斜め前から聞こえたので顔をあげると、真っ黒な救急車が線路でこっちに向かってきてました。 車体は真っ黒で、上のライトは赤と黄色でした。 黒い救急車が私達の前で停まると、黒い服(後に喪服と分かる)を着た大人達が出てきて、Aちゃんを無理やり乗せていきました。 Aちゃんは泣き叫んでいて、私も「Aちゃんを連れてかないで」と泣いてお願いしたのですが、大人のひとりがこちらに振り返って、声が出なくなりました。 親よりも少し年上の大人(たぶん40代)の男性が、私を見て、歯をむき出しにしてニタァと笑ったのです。歯は全部真っ黒でとても怖かったです。「
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 僕の父方の祖父母は田舎町に住んでいます。祖父母の家のお隣さんはすごく変な人達で、苦手でした。 さっきも書いたように、祖父母の家は田舎で、当時子供の僕には退屈でした。「隣の家にAくんがいるから、遊んでおいで」と言われて行くと、僕と年の近い男の子がいました。 このA一家は普通じゃありませんでした。例えば、都会暮らしの僕からすれば、Aくんに案内される森はとても新鮮で、大きいクワガタを見つけて「見て、おっきいクワガタいた! すげー!」と言ったら、「小さいじゃん」というのです。 Aくんの家族もこんな感じで、Bさんという人の悪口を複数人で言ってたらBさんが来て、「今あなたの噂話をしてたの。旦那さん出世したんですってね。すごいわ」と誰かが言ったら、「皆であなたの悪口を言ってたの。夫の金で贅沢して威張り散らしてみっともないって」と言ってしまう。 子供ながらに、なんて空気が読めない人達だと思いました。 おばあちゃんにそのことを言ったら、「あの人は正直に生きないといけないからね」と言うだけでした。 僕には兄と妹がいるのですが、ふたりもA達をよく思っていないみたいでした。A家にはまだ4,5歳のCちゃんがいました。 僕らはCちゃんを呼び出すと、「今日は嘘を付く日だからCちゃんもなんか嘘言ってみてよ」と兄が言いました。 僕らの作戦はこうです。まだ幼いCちゃんにエイプリルフールのルールを教えて嘘をつかせ、Cちゃんの両親に「Cちゃんが嘘をついた」とチクって怒ってもらおう。 なんでこんなことをしたのか、よく分かりません。ただ、嘘をつけない彼らがいい子ちゃんぶってるように見えて、面白くなかったのでしょう。 最初は「嘘はだめなんだよ」と言うCちゃんでしたが、「すぐに嘘って言えば問題ないよ」と兄に言われ、僕も「もし面白い嘘言えたらこれあげる」とお菓子を見せつけました。 お菓子の誘惑に負けたCちゃんは、「明日になったら猫ちゃんがうちに来る」と言いました。 Cちゃんは猫が好きだけど、家の人に反対されて飼えないと前に言ってたので、願望を可愛い嘘にしたんだなと微笑ましいと見てました。 Cちゃんはいきなり苦しみだし、白目をむいて痙攣しました。「大人呼んでこい!」 兄に言われ、僕と妹は大人に助けを求めに生きました。偶然Cちゃんの両親がいたので声をかけて、連れてきました。 Cち
last updateLast Updated : 2025-12-21
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