過ちの夜が明けて特殊部隊の訓練基地にある病院。そこの最年少外科部長、長谷川美羽(はせがわ みう)は海外帰りの天才だ。その手は数えきれない大手術を成功させてきた、まさに神の手だった。
しかし今、彼女の手は、無情にも誰かの足元で踏みにじられていた。
それをするのは彼女の夫であり、訓練基地の責任者でもある長谷川竜也(はせがわ たつや)だ。
竜也は椅子に静かに腰かけ、きちっとした制服姿で、平然とした顔をしていた。
彼の背後にある部屋からは、美羽の妹・二宮紬(にのみや つむぎ)が男たちにベッドへ押し倒される音が聞こえる。助けを求める紬のか細い声が、美羽の心をえぐるように響いていた。
「美羽、さっさと楓のお母さんの手術をしろ。さもなければ、今すぐ紬の部屋のドアを開け放ってやる。あいつのみだらな姿を、街中の人たちに見せてやろう」
美羽は歯を食いしばり、血走った目で竜也を睨みつけた。
「竜也、どうして、私にこんなひどいことをするの?」