嘘とまどろみの月「司令官、『国家AIロボット開発計画』への参加を決めました」
それは、高度に暗号化された極秘回線による通話だった。
電話の向こうで、司令官の声色が厳粛なものに変わる。「この計画は国家最高機密だ。世間から隔絶された基地で生活し、生涯、外部との連絡は一切断たれることになる。その覚悟はあるのか?」
江原詩音(えはら しおん)は、きっぱりと言い放った。「あります」
「ならば歓迎しよう。君が参加してくれれば、研究の進捗は劇的に加速するだろう。何か条件はあるか?可能な限り叶えよう」
「私専用の万能型ロボットを一体いただきたいのです。初期プログラムは私自身の手で書き上げます」
「それくらいなら容易いが……理由を聞いても?」
詩音は重く息を吐き出し、静かに答えた。「ロボットだけが、永遠に心変わりしないからです」
司令官は尋ねた。「確か、君はもうすぐ結婚を控えていたはずだ。何かトラブルがあって、この計画への参加を決めたのか?」
詩音は少し考えると、こう続けた。「司令官、私と瓜二つの初級ロボットを一体、用意していただきたいのです。……私の代わりに、結婚させるために」