夢見る貴方は真冬に降る雪の如き「平野さん、当時約束した期間は十年でしたよね。もう期限になったし、音夢を連れてこの家から出ていきたいのです。
知ってるはずです。彼はずっとあの子のこと、気に入らなくて」
茶房で、時光美波(ときみつ みなみ)は苦笑いを浮かべながら、話していた。
十年も平野冬雪(ひらの ふゆき)のそばにい続けてきたのに、彼の心は尚氷のように冷たかった。
しかしあの日、酔っ払った冬雪は彼女をベッドに押し倒し、情欲にかけられ、あの子ができてしまった。
その後、美波は一軒家をもらい、音夢を産む許可ももらったが、冬雪は未だ恋人がいることを公表していないから、唯一の条件として、音夢が彼のことを「パパ」と呼ぶことは許されなかった。
「一生お前と結婚したりしないから、諦めろ。
子育て費用は俺が払う。ただし、こいつが自分の娘だなんて認めると思うなよ。俺に娘なんていない」