彼女を百回許した後人はどこまで金持ちになれるのか?
僕の妻はとてつもない金持ちだ。
世間では彼女を「西園寺半城」と呼ぶ。帝都の不動産の小半分が彼女のものだからだ。
結婚して五年。彼女が「昔の想い人」に会いに行くたびに、僕の名義に不動産が一つ譲渡されることになっている。
僕の名義の不動産が99軒になった頃、妻は突然、僕が変わったことに気づいた。
僕はもう泣きわめかないし、「行かないで」と懇願することもしない。
ただ、帝都で最高級の別荘を自ら選び、不動産譲渡契約書を持って、彼女がサインするのを待っていた。
彼女はサインを済ませると、初めて少し心が揺らいだような顔を見せた。
「ねえ、帰ってきたら、一緒に花火を見に行きましょう」
僕は素直に書類をしまい込み、「うん」とだけ答えた。
ただ、頑なに彼女へは教えなかったことがある。
今回彼女がサインしたのは……
僕との『離婚届』だったということを。