夫を息子の葬儀に参列させなかった結婚して十年。
その人は夫でありながら、私は彼を息子の葬儀に参列させない。
理由は――息子が亡くなる前に残した三つの願い。
一つ目。「今はまだ……パパに僕のことを言わないで。パパが悲しむから」
二つ目。「最後の誕生日、僕の一番好きな料理を作ってほしい。それを食べながら、パパと一緒に過ごしたい」
三つ目。「もしパパが来なかったら……絶対に、絶対に、絶対に、あの人を僕のお墓に近づけないで」
だから息子が息を引き取ったあと、外でどれだけ激しい雨が降ろうとも、その人の目が真っ赤に腫れて震えていようとも、どれほど声が枯れるほど泣き叫んでいようとも――
私は決して、息子に一歩たりとも近づかせなかった。
三日前。鷹見隼斗(たかみ はやと)は、皓月(こうげつ)母子と夜通し花火をして祝った帰りに、新品のランドセルを息子に買ってきた。
息子の誕生日に戻って来なかったことへの「埋め合わせ」として。
私が涙を浮かべたのを見て、彼は眉をひそめた。「たかが一回の誕生日だろう。次にちゃんとすればいいだけじゃないか?」
そのとき、彼はまだ知らなかった。
私たちの七歳の息子は、喘息で亡くなり、もう二度と入学の日を迎えることはないということを。