月明かりの下でさよならを笠原南雄(かさわら みなお)と付き合い始めて五年目。
門司茜(もんじ あかね)は密かに婚約指輪を買い、勇気を振り絞って彼にプロポーズするつもりだった。
しかし運悪く、その日、パーティーに数分遅れてしまった。
ちょうど彼が友人と話しているのを耳にした。
「お前、周防希枝(すおう きえ)のために茜と五年も付き合っただけでも十分なのに、今度は彼女と結婚までしようって?正気か?」
南雄の声は冷ややかだった。
「希枝が幸せになれるなら、愛していない相手と結婚することだって厭わない」
だが、今回は茜は騒ぎ立てなかった。
指輪を投げ捨て、ラブレターを切り裂いた。
そして深夜の便に乗って去り、家同士の縁談に縋る道を選んだ。