死んでも別れない五年前、藤原真司(ふじわら しんじ)の母親が交通事故で亡くなり、江口橙子(えぐち とうこ)がその罪をかぶった。
出所したとき、婚約者の真司の姿はどこにもなかった。
彼女はぼんやりと、五年前に二人で暮らしていた家へ向かった。
だが、玄関の扉には【江口橙子と犬、立ち入り禁止】と書かれた紙が貼られていた。
一瞬、呆然と立ち尽くし、壊れた身体を引きずりながらその場にしゃがみ込んだ。
真夜中、真司が一人の女と親しげに並んで歩く姿が彼女の視界に入った。
「おや、遠くから見るとどこの大人しい飼い犬かと思ったよ」
真司はうんざりしたように橙子を一瞥し、「よくも来られたものだな!扉に書いてある文字が見えないのか?さっさと失せろ!」と吐き捨てた。
追い出された橙子は、みすぼらしい姿で街をさまよい、電柱に貼られたチラシに目を留めた。【人体提供、年齢問わず!ごまかしなし!お値段は超お得!】