彼女の心を抱きしめる橘冬生(たちばな ふゆき)と七年間付き合ったが、彼は飽きて、より若い女の子のもとへ去っていった。
今回は私――如月汐(きさらぎ うしお)は騒ぎも立てず、ペアリングを置き去りにし、新しく買ったウェディングドレスを切り裂き、深夜便で京光市を離れた。
彼の友人たちは口々に、私がいつ頭を下げて和解するか賭けをした。
冬生は冷たく笑った。
「三日も経たずに、泣きながら戻ってくるさ」
だが三日経ち、さらに三か月が過ぎても、私はまったく連絡を寄こさなかった。
冬生はついに我慢できず、初めて自ら私に電話をかけた。
「汐、十分だろう、戻ってこい……」
しかし受話器の向こうからは、男の低い笑い声が聞こえてきた。
「橘社長、女の子をあやすのは長く待たせればだめだぞ。さもないと、途中で横取りされかねないからな」
冬生は目を真っ赤にし、歯を食いしばって叫んだ。
「汐は?電話に出させろ!」
素良はうつむき、ベッドで横になる私にそっと口づけた。
「無理だな。汐はまだ気を失って、俺のことを怒ってるんだ。まずキスで起こさなきゃ」