骨まで蝕む愛、その正体は嘘この街で、この事実を知らぬ者はいない。雪代琴音(ゆきしろ ことね)は黒崎蒼真(くろさき そうま)の心臓に焼きついた「唯一無二の存在」なのだと。
蒼真の愛は常軌を逸した執着であり、その寵愛は狂気すら帯びていた。彼が琴音に捧げた「世紀の結婚式」は見る者すべてを羨望の渦に巻き込み、社交界の語り草となったほどだ。
だが、結婚式の翌日、琴音は顔に醜い傷を負い、その美貌を失った。
蒼真は彼女のために煌びやかな別荘を築き、七年間、彼女をそこに軟禁して愛で続けた。
蒼真がかつて自分を虐げ抜いた女の手を取り、ヴァージンロードへと足を踏み入れたその瞬間――琴音はようやく悟った。
あの「世紀の結婚式」さえも、自分を監禁するための茶番に過ぎなかったことに。
琴音の顔を奪ったその残酷な真実もまた、彼女を愛してやまないこの男の仕業だった。
琴音は泣き喚くこともなく、ただ静かに、蒼真の宿敵である男に電話をかけた。
「ここから逃がして。そうしたら、あなたと結婚するわ」