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骨まで蝕む愛、その正体は嘘

骨まで蝕む愛、その正体は嘘

By:  最上慎Completed
Language: Japanese
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この街で、この事実を知らぬ者はいない。雪代琴音(ゆきしろ ことね)は黒崎蒼真(くろさき そうま)の心臓に焼きついた「唯一無二の存在」なのだと。 蒼真の愛は常軌を逸した執着であり、その寵愛は狂気すら帯びていた。彼が琴音に捧げた「世紀の結婚式」は見る者すべてを羨望の渦に巻き込み、社交界の語り草となったほどだ。 だが、結婚式の翌日、琴音は顔に醜い傷を負い、その美貌を失った。 蒼真は彼女のために煌びやかな別荘を築き、七年間、彼女をそこに軟禁して愛で続けた。 蒼真がかつて自分を虐げ抜いた女の手を取り、ヴァージンロードへと足を踏み入れたその瞬間――琴音はようやく悟った。 あの「世紀の結婚式」さえも、自分を監禁するための茶番に過ぎなかったことに。 琴音の顔を奪ったその残酷な真実もまた、彼女を愛してやまないこの男の仕業だった。 琴音は泣き喚くこともなく、ただ静かに、蒼真の宿敵である男に電話をかけた。 「ここから逃がして。そうしたら、あなたと結婚するわ」

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Chapter 1

第1話

この街で、この事実を知らぬ者はいない。雪代琴音(ゆきしろ ことね)は黒崎蒼真(くろさき そうま)の心臓に焼きついた「唯一無二の存在」なのだと。

蒼真の愛は常軌を逸した執着であり、その寵愛は狂気すら帯びていた。彼が琴音に捧げた「世紀の結婚式」は見る者すべてを羨望の渦に巻き込み、社交界の語り草となったほどだ。

だが、結婚式の翌日、琴音は顔に醜い傷を負い、その美貌を失った。

蒼真は彼女のために煌びやかな別荘を築き、七年間、彼女をそこに軟禁して愛で続けた。

そして結婚七周年の日。

これまで一度として外泊をしたことのなかった蒼真が丸三日間姿を消した。

琴音の胸に、不安が広がった。

蒼真はその強引なやり方で多くの恨みを買っていた。琴音が何よりの誇りとしていたその美貌さえも、彼への報復の巻き添えとなり、無惨に奪われたのだ。

あの日以来、蒼真は小さな街ほどの規模がある敷地に別荘を建て、琴音をそこに囲い込み、一歩たりとも外へ出そうとはしなかった。

七年の時を経て、使用人の隙を突いた琴音は初めてその豪華な別荘から抜け出した。

だが、蒼真の携帯の位置情報を頼りに辿り着いた先は華やかな結婚式場だった。

入り口の警備員が入ろうとする琴音を無愛想に遮った。

警備員は冷たい口調で言った。「招待状は?今日は黒崎社長と宝生家の令嬢、宝生摩耶(ほうせい まや)様の結婚式だ。関係者以外は立ち入り禁止だ」

「彼が……摩耶と結婚するですって?」

琴音の瞳孔が収縮し、全身の血が凍りついた。

蒼真の独占欲は狂気じみている。他の女を娶るなどあり得ない。

ましてや、七年前の私たちの結婚式はこの街全体を揺るがすほどの騒ぎだったのだから。

警備員は琴音を品定めするように見回し、顔を隠す仮面で視線を止めると、鼻で笑った。「当たり前だろう?まさか、お前のような顔の崩れた醜い女と結婚するとでも思ったか?

社長の周りには女なんていくらでもいる。お前のような傷物はさっさと諦めるんだな。宝生様と結婚しなくとも、社長がお前を選ぶことなど絶対にない」

その棘のある言葉が鋭い針となって琴音の胸に突き刺さった。

琴音は羞恥と屈辱にまみれ、慌てて背を向けた。顔の醜い傷跡が人目に晒されるのを恐れ、必死で仮面を押さえた。

弁解する間もなく、琴音は警備員に乱暴に突き飛ばされた。

彼女はよろめいて後ずさりした。全身の力が抜けていくようだった。警備員の嘲笑と、宝生摩耶という名前。その二つが爆弾のように彼女の世界を粉々に破壊した。

この女は他人ではない。かつて三年間にわたり、琴音をいじめ抜いた張本人だ。

放心状態の琴音の耳に、遠くからどよめきが届いた。

黒のマイバッハから、長い脚を優雅に運んで降り立つ蒼真の姿があった。

フラッシュの嵐。メディアが一斉に群がった。

黒山の人だかりの向こう側。琴音はその男の姿をはっきりと認めた。見間違うはずもない。それは丸三日間消息を絶っていた夫、蒼真その人だった。

衝撃に、琴音の両足は鉛のように重く強ばり、まるでその場に縫い付けられたかのように身動きひとつ取れなくなった。

琴音は群衆に乱暴に突き飛ばされ、地面に倒れ込んだ。無数の足が彼女の手や足を容赦なく踏みつけていった。

全身が痙攣するほどの痛みに襲われたが、それでも彼女は仮面を死守した。この恐ろしい顔を誰にも見せるわけにはいかない。

蒼真が結婚式場へと消えていくのを見届け、琴音は惨めに地面へ座り込んだ。

信じられない。命を懸けるほど私を愛していた蒼真がよりによって摩耶を娶るなんて。

彼は知っているはずだ。私がどれほど摩耶を憎んでいるか。

琴音は痛む体を引きずり、人混みに紛れて警備員の目を盗み、会場へと潜り込んだ。

蒼真の後を追い、あるホテルのスイートルームへと辿り着いた。

問い詰めようとドアに手をかけた瞬間、中から談笑する声が漏れ聞こえてきた。

「ねえ蒼真、琴音がここに来るかもって心配じゃないの?」

「あの別荘は二十四時間監視がついている。逃げ出せるはずがない。七年前、俺が人を雇ってあいつの顔半分を潰させたのは、あいつを永遠に俺のそばに縛り付けておくためだ」

蒼真の低い声には骨まで凍るような冷たさが宿っていた。まるで取るに足らない雑談でもしているかのようだ。

「家も後ろ盾もなくし、あんな無惨な顔になった女に、俺の妻が務まるとでも?あいつはただ、俺のカナリアとして大人しく籠の中にいればいい。死ぬまで飼い殺してやるさ」

その言葉は毒蛇のように耳から入り込み、瞬く間に琴音の心臓を食い荒らした。

七年前、結婚式の翌日。彼女は出勤途中に拉致された。

暴漢たちは琴音が何よりの誇りとしていた美貌をナイフで無惨に切り刻み、彼女をまるで生ゴミのように路地裏へ打ち捨てた。

絶望し、何度も死のうとした彼女を死神の手から引き戻したのは蒼真だった。彼は震える彼女を抱きしめ、何度も懺悔した。

「琴音、世界最高の形成外科医を探してやる。犯人には必ず償わせるから!」

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