心臓と共に去った愛私・一ノ瀬澄佳(いちのせ すみか)の夫・一ノ瀬司(いちのせ つかさ)が何の前触れもなく姿を消してから三か月目、私はSNSをだらだら眺めていて、カップル系配信者のショート動画が流れてきた。
背の高い男が、強引に彼女を腕の中に引き寄せる。
「ほら、聞こえる? 俺の心臓が『愛してる』って言ってるだろ。」
そう言って、そのまま顔を近づけて、むさぼるようなキスを交わした。
はだけたシャツの胸元には、意味ありげな爪痕がいくつも走っている。
コメント欄は「尊い」「お似合いすぎ」といった言葉で溢れていた。
私は思わず息を呑んだ。
結婚して七年。顔が映っていなくても、それが司だと一目で分かった。
私が昼も夜もなく司を探し回っていたあの日々、その間ずっと、彼は別の女と甘く愛し合っていたのだ。
私が悲しみのあまり流産して入院していたときでさえ、彼はその女とベッドで激しく抱き合っていた。
涙を拭い、私は弁護士をしている友人に連絡を取り、離婚協議書の案を作ってもらうことにした。