誰もが、たった一輪のバラ菅原慎吾(すがわらしんご)は一晩で私を八回も求めた。
九回目、彼は私の腰を掴み、満足で嗄れた声で囁いた。「ハニー、今の純真でながら妖艶なその姿で、立花律哉(たちばなりつや)を誘惑してこい」
私は全身が硬直した。
その時初めて知った。慎吾が心の奥で大切にしている人が、律哉に振られて傷ついていることを。
彼は私に、その復讐として、律哉にも愛する人に捨てられる味を味わわせようとしていた。
実家が倒産した後、私は慎吾の元へ送り込まれた。
私は愚かにも、自分は特別だと信じていた。何しろ彼のそばに一番長くいる女だったから。
だが彼は嘲笑った。「君を留めているのは、千紗に似ているからだ。今、彼女が傷ついている。君の出番だ」
私は涙ぐみながら承知し、全ての妄念をしまい込んだ。
やがて、高嶺の花である律哉は、私の虜となった。
すると慎吾は、初めて取り乱し、目を赤くして懇願した。「葵、後悔した。戻ってきてくれないか」