また、感情表現の微妙さに対して高評価がつく一方で、文化的文脈が読者に伝わりにくいとの指摘もあり、そうした点はレビューで繰り返し議論される。西洋の読者が作品の持つ静かな重さをどう受け取るかは、翻訳とレビュアーの背景に大きく依存する。比較対象として時に取り上げられるのはハヤカワ文庫などで議論になる' A Little Life'に向けられた海外レビューの反応で、感情の扱われ方に関する捉え方が参考になる。
具体的な論点としては、敬語や微妙な言い回しの訳出、固有名詞や地名の扱い、訳注の有無が挙がる。訳者の選択が作品の印象を左右するので、翻訳者名を挙げて評価するレビュアーも少なくない。学術的な書評では、原語の文化的背景をどれだけ補足するかが批評の主題になることが多く、英語圏の書評はそうした鋭い視点を提供してくれる。こうした傾向はカズオ・イシグロの'The Remains of the Day'が翻訳を通じてどう再解釈されたかを参照する議論と通じるところがある。
英語圏のレビューを拾い集めると、タイトルの英訳はだいたい三つの方向に分かれていると感じる。まず直截に感情を伝えるタイプで、要するに短く『Meaningless』とする紹介が多い。僕はこのやり方をよく見かけるが、読者の目を引きやすく、作品の虚無感や不在感を即座に示すために便利だ。短い見出しやSNS風の紹介文では特にこれが好まれる。
次に文学的で婉曲な英訳を選ぶレビューがある。そこで見かける表現は『Of Little Consequence』のような語感を残すものだ。これは原題が持つ「取るに足らない」という価値評価のニュアンスを尊重していて、単なる「無意味」よりも人物の内面や社会的位相を示唆する紹介になる。評論寄りの長めのレビューや紙媒体では、この種の言い回しがよく用いられる。
最後に意訳して文脈を補う手法を使う紹介もある。たとえば『An Insignificant Meaning』や『A Meaning of No Consequence』といったタイトル付けだと、レビュー本文でテーマや設定を細かく説明する余地が生まれる。僕は個人的に、作品のトーンに応じて訳語を変えるレビューの柔軟さに好感を持っている。どの訳を選ぶかで読者の期待値が変わる——そこが面白いところだと感じる。