また、感情表現の微妙さに対して高評価がつく一方で、文化的文脈が読者に伝わりにくいとの指摘もあり、そうした点はレビューで繰り返し議論される。西洋の読者が作品の持つ静かな重さをどう受け取るかは、翻訳とレビュアーの背景に大きく依存する。比較対象として時に取り上げられるのはハヤカワ文庫などで議論になる' A Little Life'に向けられた海外レビューの反応で、感情の扱われ方に関する捉え方が参考になる。
具体的な論点としては、敬語や微妙な言い回しの訳出、固有名詞や地名の扱い、訳注の有無が挙がる。訳者の選択が作品の印象を左右するので、翻訳者名を挙げて評価するレビュアーも少なくない。学術的な書評では、原語の文化的背景をどれだけ補足するかが批評の主題になることが多く、英語圏の書評はそうした鋭い視点を提供してくれる。こうした傾向はカズオ・イシグロの'The Remains of the Day'が翻訳を通じてどう再解釈されたかを参照する議論と通じるところがある。