翻訳で面白いのは、同じ一節でも英語だと重心が変わって伝わる点だとよく感じる。歌の中で繰り返される「飛ぶ」や「羽」というモチーフは、元の日本語だと曖昧で詩的な余白を残すけれど、英語にすると具体的な動作や命令に聞こえやすい。
たとえば『アゲハ蝶』のサビで想定される“飛べるかどうか”系の表現は、直訳すると単純に“Can you fly?”になるけれど、そこから失われるのは躊躇や心の揺らぎだ。英語では助動詞や語順で強弱をつける必要があり、“Will you try to fly?”や“Could you ever fly?”といった選択肢でニュアンスが大きく変わる。
繰り返しや句切れの仕方も重要で、句点一つで命令にも励ましにも変わる。翻訳するときは行間の感情――諦め、希望、揺らぎ――を英語の表現でどう残すかを常に考える。