駆け落ちを扱ったノンフィクションを探していて、私がよく挙げるのは伝記や原資料を中心に読んでいく方法です。駆け落ちという行為は個人の恋愛や社会的対立が交差する場面なので、単独の「駆け落ち本」よりも、伝記・手紙集・社会史の章として詳述されていることが多いからです。まず直接的で手堅い入門としては、当事者の手紙や第一級史料を編んだ書物が役に立ちます。たとえば、中世の有名な駆け落ち(とされる出来事)を知りたいなら、当事者の書簡をまとめた『The Letters of Abelard and Heloise』のようなテキストが、実際の経緯や当事者の心情を生々しく伝えてくれます。英訳や注釈付き版はいくつも出ているので、注釈が豊富な版を選ぶと背景の理解が深まります。
次に、近代以降の具体例を扱う伝記もおすすめです。たとえばジャズ・エイジの複雑な恋愛と駆け落ち的な出来事を扱うものなら、F.スコット・フィッツジェラルドとゼルダに関する伝記や研究書が参考になります。フィッツジェラルド夫妻の関係は伝記の中で詳述され、若い男女が家族や社会の反対を押し切って結婚した経緯や、その後の軋轢が描かれます。具体的な書名だと、フィッツジェラルドの伝記や、ゼルダを扱った評伝(例:『Zelda』など)の章に当時の“駆け落ち”に相当する場面が詳しく述べられています。また、ヴィクトリア朝期の恋愛に興味があれば、エリザベス・バレットとロバート・ブラウニングの関係を扱った手紙集や評伝を読むと、二人が家族の反対を押し切って結婚したいきさつが一次資料を交えて追えます。これらは単なるロマンスではなく、法的・社会的制約に対する個人の抵抗としての側面がよくわかります。
一方で、駆け落ちが犯罪やスキャンダルに発展したケースを読みたいなら、トゥルー・クライムや地域史の単行本を当たるといいです。地方新聞のアーカイブや地方史料館に収められた事件報道をまとめたノンフィクションには、駆け落ちの後に起きた誘拐、家出、失踪などの詳しい記録が残っていることが多いです。そうしたケースは単行本化されているものもあれば、学術論文や雑誌記事としてまとめられていることもあるので、図書館のデータベースや新聞アーカイブでキーワード検索するのが近道です。
最後に実用的な探し方をひとつ。図書館の蔵書検索やWorldCatで“elopement”“runaway marriage”“secret marriage”“駆け落ち”“駆け落ち事件”といった言葉と、興味のある時代や人物名を組み合わせて検索すると、伝記・手紙集・地域史の章として該当する文献が出てきます。一次資料(手紙や結婚記録)を集めた版や、学術的な注釈がついた伝記を選ぶと、当時の法的・社会的背景まで理解できるので特に役立ちます。自分が読みたい観点(ロマンチックな視点、社会史的分析、犯罪経緯など)を決めてから資料を選ぶと、より満足感のある読書になります。