真っ先に思い浮かぶのは『黒執事』だ。ダークで様式的な世界観のなかで主人と執事という関係が極端にデフォルメされていて、
ドムサブ的な息遣いを感じさせる場面が多い。命令と服従が文字通り契約で結ばれていること、執事が完璧に支配的な振る舞いをする一方で主人の心理が壊れやすい繊細さを持っている点が、緊張感を持たせる理由だと思う。
読み手として惹かれるのは、表面的な優越感だけで終わらせずに互いの弱さや依存が見える描写があるところだ。だが非合意や搾取に見える表現もあるので、フェティッシュな側面だけで称賛するのは違和感がある。個人的には、様式美と心理描写が噛み合ったときにこの設定が最も効果的になると感じている。