結構幅広いジャンルだけど、なろう系作品に共通して見られる世界観や設定には典型的なパターンがいくつかある。まずは“異世界転生/転移”が最も分かりやすい柱で、現代の知識やスキルを持ち込む主人公が、中世ファンタジー風の世界や魔物がはびこる世界で活躍するという流れが多い。システム的にはステータス表示やレベルアップ、スキル習得といったゲーム的な要素が明示されることが多く、世界そのものが“数値化”されることで成長の実感が得られる設計になっているのが特徴だ。
僕が特に興味深いと感じるのは、願望充足型の設定が幅広く用意されている点だ。例えば「チートスキル」や「最強能力」を手に入れて成り上がる王道パターン、異世界で
スローライフ/領地経営を始めるハートフルなパターン、現代の知識で産業や医学を発展させるビルドアップ系、魔王討伐や国取りなどの大規模な勧善懲悪ものなど。舞台は中世ヨーロッパ風の王国やギルド、魔法学校、危険な
ダンジョン、
辺境の田舎街といった要素が多く見られ、『転生したらスライムだった件』や『無職転生』のように主人公視点で世界を学んでいくタイプもよくある。
物語構造に関しては、成長や達成感を重視するために「小さな成功→大きな挑戦→さらなる成長」という一本道の積み重ねが多い。これが読者にとっての快楽ポイントでもあり、逆に同じようなテンポやテンプレ設定が繰り返されることで批判されることもある。政治や宗教、差別といった社会的テーマを深く掘り下げる作品も増えてきている一方で、簡潔で読みやすいプロットを優先して世界観の説明を最小限に留める作品も多いのが実情だ。
個人的には、なろう系の魅力は「手軽に没入できる成長の快感」と「多様な願望のプロット化」にあると思っている。テンプレが目立つぶんだけ、新しい切り口やキャラクター描写で光る作品が出てくると強く印象に残る。ジャンル自体は今も進化中で、エンタメ性と社会的テーマのバランスをうまく取る作品に出会うとワクワクする。