イゾルデというキャラクターを原作小説で追いかけると、その複雑な心理描写が印象的だ。特に彼女の内面の葛藤は、情景と絡めながら丁寧に描かれている。例えば、月光に照らされた城壁の上で一人佇むシーンでは、愛と使命の狭間で揺れる心情が、衣装のたなびきや手の震えといった細部を通じて伝わってくる。
彼女の台詞回しにも特徴がある。高貴な生まれながらも
市井の言葉遣いを時折混ぜることで、二つの世界に属しながらどちらにも完全には馴染めない立場を巧みに表現している。『黄昏の騎士録』の第三章で
幼馴染と再会した際の会話は、敬語と砕けた表現が入り交じり、読者に彼女の立場の不安定さを強く印象付ける。
武器の扱い方についての描写も興味深い。剣術の腕前は一流ながら、決して無駄な力を込めない「流れるような動作」と表現される。これは彼女の戦い方が単なる武力ではなく、知性と戦略に裏打ちされていることを示唆している。特に第五巻の決戦シーンでは、敵の動きを読んで先回りする描写が何ページにもわたって続き、キャラクターの知性派ぶりが際立つ。