物真似を扱う番組制作では、法的リスクを想定した多層的な準備が欠かせないといつも考えている。制作の初期段階では、企画書に法務チェックのスケジュールを組み込み、誰がどのタイミングで何を確認するかを明確にしておくのが基本だ。
私は台本段階で顔や声を模倣する対象が明確に特定される前から、肖像権や名誉毀損に関する調査を始める。具体的には、対象者が公人か私人か、過去の発言・表現で問題化した前例があるか、パロディとして許容される余地がどれくらいあるかを弁護士と擦り合わせる。場合によっては、模倣の表現を抽象化して特定の個人を直接指さない「合成キャラクター」へ置き換えることでリスクを下げることもある。
本番前の最終段階では、出演者に対する同意書(使用許諾や補償条項を含む)や、外部ゲストに適用する免責条項を整備する。加えて、放送事故やクレーム対応のための社内連絡網と想定問答集を作り、保険(番組賠償責任保険)に加入することも私は重視している。こうした備えがあれば、笑いを守りつつ法的ダメージを最小化できると感じている。