特に印象的なのは、フォーションヌ通りでのバリケード戦の描写だ。原作では学生たちの理想主義が詳細に語られるが、映画ではエディ・レッドメインのマリユスが『Empty Chairs at Empty Tables』を歌うシーンに全てが凝縮されている。両方の媒体が互いを補完し合う形で、19世紀フランスのドラマを現代に伝えているんだなと感じた。
原作ではマリユスとコゼットの恋愛が政治的背景と絡めて描かれるが、映画では革命描写がメインとなり、ラブストーリーはあっさりしている。特にエポニーヌの役割が縮小されたのは残念だった。ミュージカル作品としての制約上、3時間で収めるために削られたエピソードも多く、主教の銀器エピソードやテナルディエ夫妻の悪質さが十分に描き切れていない。それでもアン・ハサウェイの『I Dreamed a Dream』は原作のファンタインの悲劇を見事に昇華させていた。