筋を追っていくと、『
駈る』の伏線回収に対するファンの反応はかなり多層的だと感じる。序盤の些細な描写や断片的な会話が最終章で意味を帯びる瞬間、スレッドが一斉に盛り上がるのを何度も見た。私は個人的に、視覚的な繰り返し(小物の色や背景の細かな変化)が物語のテーマと結びついて回収されるところに大きな快感を覚えた。いわゆる「チョークの銃」がちゃんと使われる安心感があるんだよね。
ただし、すべてが称賛されているわけではない。ある伏線は説明不足で、読者の間で解釈が割れた。そこは賛否が分かれるところで、情報の与え方──断片をどれだけ露出させるか、回収のタイミング──が評価を左右している。ファンの間では、伏線を丁寧に回収して一貫性を保った点を高く評価する声と、意図を匂わせすぎて期待を膨らませた結果落差が生まれたと指摘する声が混在している。
比較の話を出すなら、私は『鋼の錬金術師』のように序盤と終盤で美しく結びつく伏線回収を基準に挙げることが多い。『駈る』は必ずしも同じ手法ではないが、結果的に主要なテーマや人物の選択に説得力を与える回収が多く、感情的なカタルシスは確かに生まれている。結末を味わった今、細部の積み重ねが効いていたと素直に感じている。