プロのイラストレーターはおこめ イラストの人気配色をどう説明しますか？

色合わせの裏側をお話しすると、まずは“制限”が鍵になると考えている。おこめさんの人気配色は、無駄をそぎ落とした少数の色で世界をつくる力量が際立っているからだ。僕は仕事で色決めをするとき、まず基調となる2〜3色を決め、その上でハイライトとアクセントをほんの一色加える運用をよくする。そうすることで視線の誘導や感情の起伏が自然に生まれる。

実践的に見ると、おこめさんの定番は低彩度の基調色に対して、少しだけ暖かいハイライトを置く手法だ。影は青や紫に振って冷たさを出し、光の部分だけにオレンジや薄いピンクを差す。こうした温度差が立体感と柔らかさを同時に生む。さらに、部分的に彩度の高い色を小さく入れてブレイクを作るのも彼女の得意技だ。

色同士の“関係”を重視することも忘れない。隣接色でそろえるのか、補色を小さく効かせるのかで印象は大きく変わる。僕はしばしばグレースケールに落として明度差だけで構図を確認し、それから色味をのせてバランスを調整する。これで配色の根拠が明確になり、偶然ではない説得力ある色使いができるようになる。最終的には、控えめなベースと効果的なアクセントのコントラストが、おこめさんの“親しみやすさ”を作っていると感じる。

配色が“心地よい”と感じる理由は、数値的な調整だけでなく、色同士の機能分担がはっきりしているからだと考えている。僕はラフ段階で色の役割を三つに分ける：背景の空間色、キャラの主要色、視線を集めるアクセント。おこめさん風の配色はこれがとてもクリアで、どの色が何を担っているかが一見してわかる。

視覚的なコツとしては、まず明度差を確保することを重視している。色相が近くても明度が違えば十分に分離するし、逆に明度が揃っていると色相差があっても潰れて見える。だから僕は制作の途中で必ずグレースケールチェックを入れて、形の読みやすさを確認してから色味を載せるようにしている。また、画面内に一つだけ高彩度の色を残すことで、そこが自然な焦点になる。たとえばセピアトーン基調にミントグリーンを一点差すといった具合だ。

色づかいは結局のところ“約束事”を守ることだと思っている。全体のルールを一つ決めて、それに従って微調整を重ねれば、統一感のある配色が生まれる。おこめさんの配色を分解すると、そうしたルール作りの巧みさが見えてくるので、自分の作品にも応用しやすい。

ぱっと見で惹かれる配色には共通点がある。自分の制作現場では、まずムードを一言で表す色語を決めてから色を選ぶようにしている。おこめさんの配色はしばしば淡いトーンを基調にしていて、そこに一点だけ鮮やかな色を置くことで画面が締まる。僕はそのやり方を日々の作業に取り入れていて、具体的にはベース→影→光→アクセントという優先順位で色味を重ねる。

テクニカルな部分を少し出すと、影を少し青寄りに振ると暖色のハイライトが映える。ライトの色は画面全体の色温度を決めるので、同じ暖色でも少し黄みを強めたり、赤みを増やしたりして表情を変えている。たとえば自分がよく使う組み合わせを挙げると、#F2E7D9（薄いクリーム）をベースに、#CDA78A（ソフトピーチ）を肌や主要なモチーフに、#7FB0A3（ややくすんだミント）を補助要素に使い、アクセントに#E86A6A（サーモンレッド）をごく小さく置く。こうした数値的な目安を持っておくと、イメージを再現しやすくなる。

最後に、色の塗り方自体も配色の見え方を左右する。濃度を下げて乗せるレイヤーや、グラデーションで明度差を作る手法は、おこめさんの絵の“柔らかさ”を再現するのに有効だと感じる。配色はただの色合わせではなく、見る側の感情を操作する強力なツールだといつも思っている。