信念や伝統の守護者を気取る人物に対して強い嫌悪感を抱くことが多いが、ロッド・レイスの場合はそれが同情に近い複雑さを生む。自分の中では、彼の動機は『家を守る』という単純なフレーズに集約されるが、その背後には恥と恐怖、過去の罪を隠蔽したいという強い衝動がある。血統を維持することで、失敗の責任を他に転嫁し、体制の崩壊を何とか先送りしたかったのだろう。
現代の王朝ドラマを見ていると、似たような心理をよく目にする。例えば『ゲーム・オブ・スローンズ』に登場する一部の貴族の行動と同様、ロッドは名誉と秩序の名の下に残酷な決断を正当化する。私はその論理の危うさに惹かれる。自己保存と支配欲が交錯すると、人は倫理的なブレーキを失いやすい。ロッドの場合、宗教的な
権威や秘密によって自らの罪を隠し、結果的に他者を支配する道を選んだ。
結局、彼を動かしたのは外的な敵への本当の恐怖ではなく、内的な不安と逃避だ。責任を取る勇気の欠如が、より大きな暴力を招いてしまったという読み方が私にはしっくりくる。