覇王と皇帝という概念は中国史において興味深い対比を形成している。春秋戦国時代、覇王は周王朝の
権威が衰える中で台頭した有力諸侯で、斉の桓公や晋の文公のような人物が『尊王攘夷』を掲げて影響力を拡大した。
一方、秦の始皇帝によって確立された皇帝制度は、天から直接統治権を授かった絶対君主としての性格が強い。覇王が諸侯間の盟主という限定的な立場だったのに対し、皇帝は全天下を支配する唯一無二の存在として制度化され、その違いは権力の源泉と範囲に明確に現れている。覇王の時代が武力と外交による勢力均衡の時代なら、皇帝は中央集権的な支配体系を完成させた新たな段階と言えるだろう。