愛さなくなっただけ夫は資産家で、長年不眠症を患っている。彼が眠れるのは、私が作った匂い袋のおかげだった。
結婚7周年の記念パーティ―。彼の幼馴染みが、庭の後ろにある古木のクスノキに、熱湯をかけた。
私は涙を流しながら、クスノキを助けようとした。すると、その幼馴染みは土下座して私に謝ってきた。
「匂い袋にこの木の葉を使っているなんて、知らなかったんです」
夫は優しく幼馴染みをなだめると、私を木に縛りつけるよう命じた。
「こんなに大切な木なんだから、この木と添い遂げればいい」
手首を骨折した私は、すぐに離婚を選んだ。
それから一ヶ月後の夜。眠れない夫は、裏庭で枯れてしまったクスノキを眺めていた。